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コラム Nikkan Olympic Column
現地レポート 五輪の光と影 五輪コラム 現地レポート 五輪の光と影

 社会部事件担当の石井康夫記者が英国社会の深層に迫る。五輪会場の内外に目を向け、現地住民の反応から、ホスト国の社会問題を多角的に取り上げる。

厳戒!テロ警備 限界!市民我慢

五輪会場周辺で銃を手に警戒に当たる警察官
五輪会場周辺で銃を手に警戒に当たる警察官

 27日の開会式を目前にして、ロンドンがきな臭い空気に包まれてきた。テロ防止へ警戒態勢が最高レベルに突入したからだ。空港や主要駅、五輪スタジアム周辺は銃を手にした警官、迷彩服の兵士たちの姿がみられるなど戦時と紙一重の光景。英国政府は50人以上が犠牲となった05年の地下鉄・バス同時テロを防げなかった苦い経験から、期間中は対テロへ総力戦で臨む。一方、近隣住民からは「こんな五輪なら早く終わってほしい」の声も出ている。

 五輪のメーン会場に隣接したショッピングセンターを歩いていると、前から防弾チョッキを着たものものしい装備の警官2人が歩いてきた。両手には自動小銃らしきものが見え隠れする。家族連れの買い物客らでにぎわう風景の中では、かなり違和感がある。恐る恐る「それってマシンガン?」と話しかけると「イエス、サー!」。警官は一見しただけで即答し、再び鋭い目つきで歩き始めた。

 開幕を目前に控え、五輪スタジアム周辺の警備態勢は最高レベルに達しつつある。会場や選手村に通じる通路はすべて複数の警備員が、がっちりガード。搬入口では車が列をつくり、1台1台厳重なチェックを受けていた。そばには迷彩服姿の軍人の姿も見られ、平和の祭典とは思えぬ、きな臭さを肌で感じた。

 英国が五輪の警備に投入する費用は5億5000万ポンド(約668億円)以上。スタジアムの周辺6カ所に地対空ミサイルを設置、大会期間中はロンドン市内を流れるテムズ川にヘリ揚陸艦も配備する。ロンドンでは05年7月、五輪開催決定の翌日に同時テロが発生した苦い過去がある。市民50人が死亡、800人が負傷する大規模テロを防げなかった。政府はその反省から、警察と軍を総動員し、テロ防止に躍起になっている。

 一方、こうした厳戒警備には住民の反対も根強い。スタジアム近くに住むジョイス・ルイスさん(60)は「(警備員が)急に増えたみたいね。ただの脅しじゃなきゃいいけど」。会場警備を巡っては、政府が英国最大の民間警備会社「G4S」に発注した約1万人の警備員がそろわないことが最近になって判明し、急きょ軍から4700人を増員。今回の五輪には、軍から総勢1万8000人を警備に投入して応急措置を施した。そんな不手際への皮肉を込めてのことだ。

 また、屋上にミサイルが設置されたマンションに住む女性は「不安で眠れない」とあきらめ顔だ。マンションは会場からは2キロ以上離れた静かな住宅街に位置する。「何でここじゃなきゃいけないのか。今はただ早く五輪が終わってほしい」と嘆いた。世界中が注目する開会式は27日。華やかな舞台の裏側では、テロとの戦いと住民の苦悩がある。

<ロンドン最近のテロ騒動>

 ◆5日 テロを計画していたとしてロンドン警視庁が18歳から30歳までの男女6人を逮捕。逮捕されたうちの1人は元ロンドン警視庁の警察官だった。

 ◆8日 英国人の男(24)が、五輪公園に近づいたとして6月に逮捕されていたことが発覚。男は以前からイスラム過激派組織とのつながりが疑われており、英政府がテロ抑止目的で、五輪会場に近づくことを禁止する命令を出していた。

 ◆23日 柔道などの会場となるロンドン東部「エクセル」で、不審物が置かれているとの通報があり警察が出動。出入り口が一時、完全封鎖され、柔道女子日本代表チームが約1時間、会場内に閉じこめられた。

 ◆G4S 英国の世界最大の民間軍事警備会社。1901年に設立。主な仕事内容は、セキュリティー管理、常駐警備、警護など。ベッカムやタイガー・ウッズらのセレブらも契約。6大陸125カ国以上に拠点を置き、従業員数は62万5000人。

 [2012年7月26日14時2分 紙面から]



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