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コラム Nikkan Olympic Column
敗者の美学 五輪コラム 敗者の美学

 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

浜田5位「まだ強くなれる」/テコンドー

<浜田真由:女子57キロ級>

 18歳に「世界5位」の満足感なんてなかった。テコンドー女子57キロ級の浜田真由(ベストアメニティ)は、9日の3位決定戦で力尽きた。2回戦で優勝したジョーンズ(英国)に敗れながら、敗者復活戦を勝ち上がった。「悔しい。ここぞというところで決められなかった」と唇をかんだ。

 最大の武器は174センチ、股下85センチのスケールの大きさだ。「暇さえあれば寝ていた」うえに、1日5食は食べる。父康二さん(44)は「よく食べるし、よく遠征に行くし、うちはテコンドー貧乏ですよ」と苦笑する。長い脚から繰り出す「かかと落とし」は、格闘家アンディ・フグばりの豪快さ。小さい頃から庭にあったサンドバッグを蹴ってきたという成果で、一気に世界の舞台へ立った。

 恩師と夢を追った。テコンドーは中学卒業でやめようと思っていた。ボートレーサーに憧れたが、その時に古賀剛コーチ(36)が東京から佐賀へ戻ってきた。01年全日本選手権優勝など日本代表で活躍してきた同コーチも、五輪は出場できなかった。「浜田は手足が長いし、何よりも肝っ玉がデカイ。だから俺は出られなかったんだと思いました」と笑う。ノビノビした指導で競技の楽しさを知り、技の幅も広げていった。

 3月に高校を卒業した。社会人1年目は「アジア以外は初めて」のロンドンが、羽ばたく舞台になった。大会前に「30歳くらいで引退して、畑仕事でじゃがいもや大根をつくりたい」と言っていたのんびりさは消えていた。「まだ強くなれる。もっと強くなって戻ってきたい」。闘志に火が付いた大器は、負けを糧にしていく。【近間康隆】

 ◆浜田真由(はまだ・まゆ)1994年(平6)1月31日、佐賀市生まれ。テコンドーは兄の影響で5歳から始め、09年アジアジュニアと10年世界ジュニア銅メダル。川副中では陸上長距離の選手でもあった。高志館高を卒業した今春、ベストアメニティ入社。家族は両親と兄、弟。174センチ、56キロ。

 [2012年8月11日9時0分 紙面から]



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