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コラム Nikkan Olympic Column
敗者の美学 五輪コラム 敗者の美学

 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

平井康翔 初五輪15位きっかけに/競泳

<平井康翔:オープンウオーター男子10キロ>

 10日の水泳のオープンウオーター(OW)男子10キロで、明大4年生の平井康翔(22=柏洋スイマーズ柏)が1時間51分20秒1でトップから1分25秒0遅れの15位と健闘した。

 OWとは08年北京大会から五輪に採用された。自然の中を10キロ泳ぎ抜いてタイムを競う。「総合格闘技のようなもの」と表現され、今大会は人工池で実施された。蹴られたり、肘が顔にぶつかったり、背中に乗り上げられたりと、泳力以外の要素も大きい。

 日本代表として五輪に派遣されたのは、今回の女子代表貴田裕美(13位)とともに初めてだった。「歴史に名を刻みたい」と目新しい競技に飛び込んだ平井は魂のこもった泳ぎで序盤から積極的に飛ばした。五輪第1号選手として「今は満足している」という。

 09年に本格参戦したばかり。自転車やマラソン選手の練習を取り入れて鍛えてきた。専門の指導者がいない日本を飛び出し、イタリアやオーストラリアなど強豪国の合宿に出向いた。175センチと出場選手の中では小柄。くじけそうになり今年初めには就職活動もした。4月の試合で途中棄権に終わり頭も丸めた。前例のない挑戦は試行錯誤ばかりだった。

 ヒップホップを好み、ファッション誌の表紙を飾ることが夢。「競技の枠を超えて注目されたい」と言動は異彩を放つ。日本ではなじみの薄い競技だが「いずれ東京マラソンみたいな大きなイベントにしたい。そのためには五輪に出ること。まずは1つきっかけになった」。壮大な夢に向け、1歩を踏み出した。

 ◆平井康翔(ひらい・やすなり)1990年(平2)4月2日、千葉県生まれ。市船橋から明大へ。08年全国高校総体400メートル自由形優勝、09年からOWSに取り組み、10年日本代表入り。175センチ、75キロ。

 [2012年8月12日10時0分 紙面から]



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