【ロンドン（英国）８日＝鎌田直秀】なでしこジャパンが今日９日（日本時間１０日午前３時４５分）、決勝の米国戦で悲願の金メダル獲得に挑む。６月１８日の親善試合ではＦＷワンバックの強さやＦＷモーガンの速さに圧倒され、１－４と完敗。Ｗ杯優勝以降、米国相手に激戦を繰り返し、現状の指標を確認してきた日本。１勝１分け１敗とＷ杯後、互いをライバル視してきた両チームが決着をつける「集大成」の舞台が整った。日本協会は帰国便を選手全員ビジネスクラスへの変更を決定。あとは金メダルを持ち帰るだけだ。

　米国を倒してロンドン五輪金メダル。いよいよ今日９日（日本時間１０日）、夢をかなえる時がきた。ＭＦ沢穂希（３３＝ＩＮＡＣ神戸）は「米国と決勝で戦いたかった。光栄。五輪の決勝はやっぱり特別。最高の夏に、最高の集大成にしたい」と笑顔を見せた。日本協会はメダルが決まったことで、帰国便をビジネスクラスへの変更を決定した。昨夏の女子Ｗ杯ドイツ大会優勝時は同クラスの空席がわずかだったため、沢らベテラン数人のみ。今回は全選手が対象となった。あとは首から一番輝く色のメダルをかけて帰国するだけだ。

　米国最大の強みは強力な２トップを誇る攻撃陣だ。身長１８０センチで男性並みの体格を誇るエースＦＷワンバックと、スピードで切り崩すモーガンに、何度となくゴールを奪われてきた。今大会もワンバックは得点ランク２位の５得点と爆発。モーガンは準決勝カナダ戦で延長後半残りわずかの場面で決勝ヘッド。気分も最高潮だ。

　沢は「１人では無理。何人かけてでもつぶさないと。そこで空いたスペースは誰かが埋める。全員守備、全員攻撃をやらないと勝てない。でも９０分で決める自信はある」と明かす。岩清水梓（２５＝日テレ）も「ワンバックに近づきすぎると腕のパワーで押さえられてしまう。少し距離をとってボールが入った時に体をぶつける」とイメージする。

　なでしこは世界ランク１位の米国と対戦することで成長してきた。Ｗ杯決勝では１２０分戦い抜き２－２。ＰＫ戦ではあるが初めて勝利した。その後１勝１分け１敗。勝敗は互角だが、両者がそれぞれ力を試し合う戦いだった。

　佐々木則夫監督（５４）はこの日の前日会見で「Ｗ杯後、米国とは４試合目。米国というすばらしいチームと戦うことで成長してきた。リスペクトして挑むことに尽きる。２人の高さや速さは何回も体感しているので自信を持って対応できる。福元がセーブして、宮間につないで、大儀見がゴールゲットする」。出席した３人の名前を出して攻略の自信を見せた。

　沢はこの日、選手村内でワンバックと再会を果たしたという。時間はわずかだったが「せっかくの決勝の舞台だから笑顔で楽しもう」と健闘を誓い合った。女子サッカー界史上初のＷ杯、五輪連覇を狙う日本と、五輪３連覇を狙う米国。沢は決戦前に笑顔で言った。「悔いなく、楽しみながら、プラス勝負にこだわりたい」。昨夏のドラマから１年を経て再び雌雄を決する両者。なでしこは大きな自信を持って頂上決戦を戦い抜く。

　◆なでしこの移動便　ロンドン五輪への往路で、男子がビジネスクラスだったのに対し、Ｗ杯女王のなでしこがエコノミークラスだったことが報じられると、世界中から疑問を呈する声が上がった。ＡＰ通信もなでしこの座席に関する原稿を打電。ニューヨークタイムズは、男女のＦＩＦＡランクの違いや、男子はメキシコ五輪以来、好成績から遠ざかっていることを例に挙げた上で、ＭＦ沢の「席は逆でもいいくらい。年齢的にも私たちのほうが上ですし。Ｗ杯は優勝したら帰りはビジネスに変更してもらえた。今回も結果を出して、そうなればいいんだけど」というコメントを紹介した。