女子バレー背番シャッフルで快勝/バレー
<ロンドン五輪・バレーボール女子:日本3-0アルジェリア>◇28日◇1次リーグA組
「火の鳥ニッポン」が快勝スタートを切った。世界ランク5位の日本は、開幕戦で同16位アルジェリアにストレート勝ちした。各選手が慣れ親しんだ背番号を12人中10人が入れ替え、蓄積された各国のデータを混乱させる作戦に出た。真鍋政義監督(48)の代名詞である「iPad」が使えないアクシデントもあったが、なりふり構わず1984年ロサンゼルス大会以来28年ぶりの五輪メダルを狙いに行く。
何かが違った。わずか57分でアフリカ王者を一蹴する強さは変わりない。だが、「12」だったエース木村が「18」を背負っていた。セッター2人を除き、6月のワールドGPまでつけていた番号がシャッフルされていた。「11を見ると、あっ私の、と思ってしまう」。06年からつけていた11から5番になった主将の荒木は苦笑していた。
「影武者作戦」の敢行だ。真鍋監督は「5月の世界最終予選で苦しんだので、新鮮な気持ちで」と真意をはぐらかしニヤリとした。五輪へ向けて再集合した今月初め。選手も驚きの背番号変更が発表された。チーム首脳は「各国にデータで徹底分析されているので、(背番号を)できるだけ同じポジションで変えた」と明かす。数年前、中国が同様の作戦を行った時に日本は混乱した。その経験を生かし、五輪の大舞台で強豪国をパニックに陥れる狙いだった。
一方で自分たちのデータも「無」になっていた。この日の真鍋監督は両手を広げながら指示していた。いつもコートサイドで持っている「iPad」がない。指揮官は「使いたいのはやまやまですが、ここはWi-Fi(ワイファイ)が通じてないので」と苦笑した。Wi-Fiとは無線LANでインターネットに接続すること。しかし、ロンドン五輪では各競技会場での使用を禁じている。その事実を26日に知った真鍋監督は「各チーム同じ条件ですが…。紙のデータも準備してます」と頭を抱えた。
温室のような日本開催の大会と違い、五輪の舞台にアクシデントはつきもの。そんな中で、全員が出場し、最終予選で不調だった木村が両軍最多15点を挙げた。復調した木村は「ここまできたら、今までやってきたすべてを出すだけ。18は初めて代表に入ったときの番号なので、初心に戻れます」とニッコリ笑った。84年ロサンゼルス五輪以来のメダルへ、まずは順当に1歩目を踏み出した。【近間康隆】