英ブックメーカー不人気?今はネットが主流
閑散としたブックメーカーの店内
ロンドン市内の駅前や繁華街などを歩くと、必ず見かけるのが「ブックメーカー」。英政府公認の賭博店で、何でも賭けの対象にしてしまうことで世界的に知られる。日本では考えられないことだが、五輪の種目だってすべて賭けの対象。今回は地元開催でもあるし、さぞや盛り上がっているだろうと、とある店をのぞいてみた。おじいさんが1人、ぽつりとたたずんでいた。
いくつものモニターに張り紙、掲示板。ブックメーカーの店内はさまざまな情報があふれている。画面には競馬中継が延々と流れ、週末に行われるサッカーのオッズ(倍率)を示すボードには、なぜか「ガンバ・オーサカ」「オーミヤ・アルディージャ」の名前もあった。ここでは何でも賭けの対象になる。ただ情報量が膨大な割には、店内にいるのはおじいさん1人。ドッグレースに夢中だった。
町のいたるところに点在する英国名物のブックメーカーは、日本のパチンコ店に近い。違うのは結果が出るのに時間がかからず、賭け金も50ペンス(約60円)からと、小額で勝負できるところ。それにしても賭けのネタには困らない五輪が地元開催中だというのに、客が少なすぎる。女性店員は「最近はいつもこんな感じ。今はインターネットや携帯電話で賭けられるから」と説明した。
国内に2000店以上を展開する大手ウイリアムヒルでは、五輪26競技302種目すべての金メダルを対象に賭けを行っている。同社広報によると「五輪種目ではサッカーとテニスが特に人気です」。売り上げについては「まだ何とも言えないが、48年以来の地元五輪開催ですから、とても大きな額が動くでしょう」と話した。
ブックメーカーの市場規模は、英国内だけでも5000億円以上といわれる。だがその売り上げの半分近くはすでにインターネットにシフトしている。ネットなら海外からも広く顧客を得られるためだ。ウイリアムヒルでも一部日本語のホームページを作成、日本からネットを通じて賭けに参加する客も多いという。
何のことはない、五輪種目の賭けで盛り上がっているのはネット上のことだった。かつては暇な男たちが集まり、ちびちび小銭を賭けながらおしゃべりをする憩いの場だったというブックメーカー。英国ならではの雰囲気を味わいたかったのだが、ここにもネット時代の波が押し寄せていた。
◆ブックメーカー 18世紀、英国の競馬場で、勝ち馬を当てる賭けを取り仕切っていた「ブッキー(記帳する人)」が原型。当初は競馬のみだったが、ラジオ、テレビなどの普及により、サッカーや海外のプロスポーツなども対象になっていった。60年に英政府がライセンス制にした上で公認。現在ではスポーツ以外でも選挙や株価など、世界中のあらゆる事象が賭けの対象になっている。