88年前も五輪が復興の力になった
「チームジャパン」が好スタートを切った。開会式前の女子サッカーで、なでしこジャパンがカナダに快勝。MF宮間が「日本の先陣として、勝てたことがよかった」と話したように、後に続く日本選手に弾みをつけたのは間違いない。
「チームジャパン」の呼び名は過去にも使われてきたが、今回ほど強調され、浸透したことはない。競技の枠を超え、全選手一丸で戦う決意。そこには、昨年の東日本大震災からの復興を願う気持ちも込められている。選手の多くが「日本を元気に」と話す。日本選手団の上村団長も「スポーツの力を信じているし、その力に期待している」と、決意を胸に話していた。
パリ大会を翌年に控えた1923年、関東大震災に見舞われた。「この惨事にオリンピックどころではない」という声の中、大日本体育協会の嘉納治五郎名誉会長は「復興には、スポーツの活力が必要」と参加を決めた。88年前も、五輪が復興の力になった。
震災からの復興は、今大会の大きなテーマ。世界も被災した日本に注目している。日本を元気にするとともに、世界に日本の元気を発信することも、選手団の役目になる。日本選手が活躍すれば「震災に負けず懸命に戦っている」ことを世界に伝えることになる。
「チームジャパン」にとって、なでしこは手本でもある。日本が世界と戦う上でのヒントがあるからだ。「個ではなく組織で」「体格差を技術で補う」「運動量で走り勝つ」。どの競技にも共通する日本の「勝ちパターン」なのだ。ミーティングの「ネタ」としてサッカー女子代表を取り上げた他競技の指導者も多かった。だからこそ、初戦勝利が選手全員の力になる。
4年前、東京にナショナルトレセンができ、代表選手同士の交流も盛んになった。互いに相談し、励まし合うことで「一丸で戦う」気持ちは強くなった。100年で初めて真の「チームジャパン」となった日本選手団。なでしこジャパンの勝利は、他競技の日本選手の活躍につながるはずだ。【編集委員・荻島弘一】