選手にもらい泣きしている記者は…
メディアが試合後の選手を取材する場所を「ミックスゾーン」と言う。人気種目の水泳には、取材人数の制限がかかる。それでもメダルの数には関係なく、日本メディアの数が圧倒的に多い? ような気がする。その通称「ミックス」ではいろんな出来事が起きる。
1日の男子200メートルのレース後、北島に20人以上が殺到した。選手とメディアの間には1メートルほどの頑丈な仕切りがあるのだが、北島の言葉を聞き漏らさぬよう、後ろからぐいぐい押し込んでくる。まるでラグビーのスクラム状態。これには北島も「前へ出すぎだよ、危ないよ」。さらに隣で立石の取材も始まった。その1分後、「バン!!」。耳を突く音とともに仕切り板が外れた。まさかの「スクラムトライ」に、さすがの北島も「うわっ、けがさせないでよ」と目を丸くした。
また、女子200メートルバタフライの星の銅メダル取材。涙ながらに話す星の前で、涙ぐみながらメモを取る某紙の青山綾里記者の姿が。96年アトランタ五輪に14歳で出場した競泳選手。取材の輪が解けたところで声をかけた。「昔の自分の姿が重なったの?」。すると「いやー私、涙もろくて。選手のがんばっている姿を見ると…」と言うや、また涙があふれた。「ヤンキー母校に帰る」じゃないけど、「五輪選手、五輪に帰る」みたいな。いろんなドラマが、このミックスには転がっている。【佐藤隆志】