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沢また心変わり「ワンバックともう1度」

銀メダルを首からかけて成田空港に帰国した沢(撮影・高田文太)

銀メダルを首からかけて成田空港に帰国した沢(撮影・高田文太)

 代表引退を巡り苦悩していたエースMF沢穂希(33=INAC神戸)は11日、銀メダルを手に帰国した。今後について「代表でもう1度ワンバックとやってみたくなった」とし、代表活動の継続を明言した。9日のロンドン五輪米国との決勝戦後、いったんは代表引退に傾きかけたが、帰国を機に再び続行を決断。五輪で無得点だったこと、ライバル・ワンバックとの再戦などが、決め手となった。なでしこジャパンはこの日、成田空港に大勢の出迎えを受ける中、銀メダルをかけ笑顔で凱旋(がいせん)帰国した。

 沢の日本代表としての情熱は、宿命のライバル、FWワンバックとの再戦に向けられた。

 沢 (代表続行を決めた理由の)1番はもう1度ワンバックと真剣勝負をやってみたくなったから。一番のライバルだし。いつも対戦したときに点をとられている。今回の決勝は米国と今までになく対等に戦えたと思う。今までで一番楽しかった試合だったと思う。

 米国との決勝を終え、代表生活に一区切りをつけたはずだった。「最後にします」。最後の五輪、そして代表生活の節目を意味した。ただ、五輪期間中、沢の心は代表引退と、代表続行の間で何度も揺れ続けた。

 代表続行への大切な助言はカズからだった。五輪前に対談していた。45歳で現役を続け、今でも日本代表を目指すカリスマの言葉に説得力があった。

 沢 カズさんに言われた言葉も思い出しました。1度きりのサッカー人生なんだから、できる限りやったほうがいい。代表は誰でも呼ばれるものではない、という言葉は重みがあった。もう次の五輪を考えると37歳だから、今は考えられない。揺れる気持ちはあったし五輪は最後だと思う。体の年齢が上がったら、どこまでできるのかは経験したことがないので分からない。心と体が一致しないといけない。でも今はサッカー人生で一番楽しくできているような気がする。

 米国戦では、運動量、ボール際での激しさ、周囲との連係、すべての面において、最強米国と互角以上に戦った。選手として体力的なピークは過ぎているが、それを補う経験とハートが沢にはある。決勝後、踏ん切りをつけた気持ちが、再びくすぶり、もう1度情熱に火が付いたとしても不思議ではなかった。

 沢 今大会でメダルは取れたけど、点はとれなかったでしょ。ゴール決められなかったことが一番悔しい。

 得点できずに、これだけ悔しく思えるのも、まだまだ代表生活を送るだけのエネルギーがある証拠だ。

 沢 代表って、監督が選んでくれるもの。私が決めることじゃないのかもしれない。選んでもらえるようなプレーをしたいし、選ばれるように頑張る。少しだけ休みます。1年か、2年かは分からないけど、もう少し頑張ってみたい。

 代表20年目。女子代表のカリスマとして戦い続けてきた。ライバルや日本代表の先輩たちからの刺激も感じ、もう1度スイッチを入れ直した。【鎌田直秀】

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