内村、「魔物」相手に冷静な分析
<ロンドン五輪:体操>◇1日(日本時間2日)◇男子個人総合決勝
強くなることと、勝ちにいくこととは違う。そこを冷静にきちんと分析できるところが、内村のすごさだと思う。最強でありながら、五輪の舞台で、難度を落として勝ちにシフトできるのは、内村ぐらいだ。
大会前にも、跳馬の難度を落とし、価値点7の「ヨー2」から6・6の「シューフェルト」に変更している。それも金メダルを見据えてのこと。跳馬で一呼吸おき、後半につなげるためのもので、前半が悪くても、跳馬に負荷がかからなければ、そこで切り替えられるという判断だ。
ただ、「緊張などしない」と言っていた内村に、「五輪には魔物がすんでいる」と言わせる五輪の意味は重かった。これまで、勝負にこだわる必要さえなかった。美しく正確に、難しい技を演じ、着地をすべて止めることに集中していれば、結果は必ず優勝だった。しかしこの日は、その内村が勝負を優先させずにいられないほどの状態だったということだ。
北京後の4年間、あまりにも順調に来すぎたのだろう。金メダルは当たり前という流れとムードができあがり、すべての人に緊張感がやや足りなかったのかもしれない。その緊張感を、五輪の独特の舞台で味わったときに、さすがの内村も魔物を感じたのだと思う。