山下氏、金ゼロ男柔道に「ゼロから作れ」
日本体育学会開催の記者会見に臨む山下泰裕氏
「世界の柔道王」山下泰裕氏(55=東海大副学長)が、ロンドン五輪で惨敗した日本柔道に危機感を募らせた。日本体育学会第63回大会(22~24日・東海大)組織委員長の同氏は16日、都内で会見。大会概要発表の後、発言を控えてきた五輪での柔道についても言及した。「予想できなくもなかった」と言いながら「ゼロから作り上げないと」と、悲壮感さえ漂わせた。
「大変に残念な結果」と話し始めると、止まらなかった。「(金メダルは男女で)最高で6、最低で1と思っていたが、最低だった」。目に真剣さがあふれる。「選手は一生懸命だとは思うが、勢い、元気、躍動感がなかった。調子はいいと聞いていたが、最終調整で上滑りしたのか」。特に男子については厳しく「穴井、上川には」と言った後、深いため息をついて「意地を見せてほしかった」と続けた。
惨敗は会場で見た。「深い悲しみと絶望があった」と振り返るが、発言は控えてきた。84年ロス五輪金メダリストで元代表監督。現在は強化の現場から退いているだけに「何か言えば混乱する」。この会見も「五輪の質問は答えない」予定だった。が、耐えられなかった。「話すのは、ここだけ」と前置きしながら、厳しい言葉が次々と出た。
「ここまで落ちると、はい上がるのは難しい。次の世界選手権、五輪がダメだと、もう上がれない」と危機感を口にした。元国際柔道連盟(IJF)理事だけに「世界が頑張ったのはいいことだが、日本はもっと頑張らないといけない」。今後、日本柔道復活のために「結果を真摯(しんし)に受け止め、原因を分析すること。ゼロから作り上げることも必要」と、強化体制や方針の見直しも含めた改革を望んでいた。【荻島弘一】