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コラム Nikkan Olympic Column
五輪ヒーロー・ヒロイン列伝 五輪コラム

五輪ヒーロー・ヒロイン列伝

 ロンドン五輪では日本選手への期待はもちろん、大舞台で新たなヒーロー、ヒロインの登場も楽しみなところ。あなたの記憶に今も残る、偉大なアス リートたちをプレーバックする。

東京金が柔道生き残らせた/ヘーシンク

64年、東京五輪柔道無差別級で金メダルを獲得したヘーシンク
64年、東京五輪柔道無差別級で金メダルを獲得したヘーシンク

<アントン・ヘーシンク(オランダ=柔道男子)>

 日本が五輪種目に柔道を加えた64年東京大会。「日本の柔道」が「世界の柔道」になったのは、無差別級決勝だった。196センチ、120キロの「オランダの巨人」が神永昭夫を破り、金メダルを獲得した。

 決勝は、神永が仕掛けて始まった。得意の体落としをかけるが、ヘーシンクは揺るがない。リーチと腕力で神永を懐に入れない。5分過ぎ、支え釣り込み足で神永の体を浮かせ、ポイントを奪う。8分過ぎ、反撃に出た神永の体落としをつぶし、逆にけさ固めに抑え込んだ。1万5000人の観客も息をのんで見守る中、30秒が流れた。

 立ち上がれない神永、うつむく日本首脳陣。そのとき、オランダ関係者と見られる男性が喜びのあまり、土足で畳に上がろうとした。とっさにヘーシンクは両手で制した。そして、がっくりうなだれる神永に近寄り、手を差し出した。

 後に「東京大会で日本人が優勝していたら、柔道は五輪の正式種目として続かなかっただろう」と話している。引退後、IOC委員などを務めた。00年、勲3等瑞宝章を受章。10年8月27日、76歳で死去した。翌9月の東京での世界選手権で追悼式が行われた。

 [2012年8月5日15時3分]



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