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コラム Nikkan Olympic Column
敗者の美学 五輪コラム 敗者の美学

 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

4年後はメダリストの歓声を/近代5種

<黒須成美、山中詩乃:複合(射撃・ランニング)>

 スタンドからの歓声がうれしかった。近代5種最終種目の複合(射撃・ランニング)。今大会の五輪出場全選手の中で、最後の競技者としてゴールに戻ってきた黒須成美(20=東海東京証券)は、待ち構えていた山中詩乃(22=自衛隊)と笑顔で抱き合った。

 日本女子として初の近代5種での五輪出場。黒須は「優勝者への声援だと思った。でも皆、私の方を見て拍手してくれていた。楽しんで終われた」。山中も「ほかの試合では味わったことのない歓声で鳥肌が立った」。

 だが、世界との差を感じさせられた五輪でもあった。黒須は36人中34位。第3種目の乗馬で落馬。腰を強打し、痛み止めの注射を打って複合に臨んだ。射撃種目を含むために選手に警察官や自衛官が多い中、民間人としての出場にこだわってきたが「世界との壁を痛感した。4年後はメダルを目指したい」と誓った。

 競技歴3年目の山中も30位に終わった。フェンシングと水泳を終えた時点で最下位。「世界大会では3度目」という乗馬で15位と健闘し、複合でも8位の結果を残したが、序盤のつまずきが響いた。陸上出身で体の線が細く「リオ五輪までにある程度ファイナルまで残れる選手になりたい」と、4年後を見据えた。

 欧州では「キング・オブ・スポーツ」と言われ人気も高い競技だが、日本では知名度も低く、女子の競技人口は1ケタだという。だが才藤監督は「ここからがスタート。2人には4年後、8年後にメダルをとる気でやってもらえれば」と、日本女子の底上げに期待を寄せた。【福岡吉央】(おわり)

 ◆黒須成美(くろす・なるみ)1991年(平3)10月22日、茨城県生まれ。近代5種学生王者だった父の影響で、小6から始める。10、11年全日本連覇。世界ランキング139位。159センチ、52キロ。

 ◆山中詩乃(やまなか・しの)1990年(平2)8月3日、高知県生まれ。高校時代までは陸上選手で、09年に自衛隊に入隊後、近代5種を始める。世界ランキング150位。157センチ、42キロ。

 [2012年8月14日9時16分 紙面から]



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