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 社会部事件担当の石井康夫記者が英国社会の深層に迫る。五輪会場の内外に目を向け、現地住民の反応から、ホスト国の社会問題を多角的に取り上げる。

ゲイが集う池 部屋には全裸男ぎっしり

ゲイが集まるロンドン北部にある通称「ゲイ池」
ゲイが集まるロンドン北部にある通称「ゲイ池」

 五輪ムード一色のロンドン中心部の騒がしさを逃れ、男性同性愛者たちが静かに時を過ごしている遊泳用の池が、同市北部の公園にあるという。通称「ゲイ池」。晴れた昼下がりに訪れてみると、池を泳いでいる人は数人だけという寂しい状況。だが仕切り板に囲われた更衣室に入っていくと、スタジアムの熱気とは別の熱気が立ち込めていた。

 ロンドン北部にある市内最大の公園ハムステッドヒース。面積3・2平方キロの広大な敷地の一角に「ゲイ池」はあった。18の自然の池を持つ園内には、男性用、女性用、男女共用の遊泳可能な池があり、夏になるたび、男性用の池にゲイたちが集まってくるという。

 見た目は普通の池と変わらない。この日は少し肌寒く、泳いでいる人もちらほら見える程度。静かで平和な午後の風景だ。だが入り口に置かれた自動券売機で2ポンドの入場料を払い、「メン・オンリー」と看板が掛かった更衣室のドアをくぐると雰囲気は一変した。

 入るとすぐに「ヌード・サンルーム」なる10畳ほどの屋根のない部屋があり、約20人の男たちでぎっしり埋まっていた。年代はさまざまだが全員が全裸姿。体を寄せ合っておしゃべりする、明らかにそれと分かる「カップル」もいれば、1人でごろ寝しながら、何かを待つように入り口をずっと見詰め続ける男もいる。もともと裸で日光浴する場所とはいえ、この人口密度、市運営の公共の公園ということも考えれば、かなり異様な光景だ。

 公園に詳しい人物によると、池にゲイが集まり始めたのは数年前から。「基本的にカップルが多いが、あそこで知り合い、2人で裏の森に消えていくケースもある。地面にはよくコンドームがころがっている」という。周辺はロンドンきっての高級住宅地で、ゲイで知られる英歌手ジョージ・マイケルも住んでいた。同人物は「ロンドンのゲイは富裕層に多いから、自然にここに集まるようになったのだろう」と話した。

 英国は05年、同性カップルに結婚と同等の権利を与えるパートナーシップ法を施行。地元メディアによると、現在までに政府予想をはるかに超える約5万3000組、10万6000人の同性“夫婦”が誕生。うちロンドンだけで4分の1を占め、潜在的な数はこの5倍との説もある。

 熱気あふれる「ゲイ池」の更衣室から脱出して外に出ると、今度は芝生の上に男性ばかりのグループが数組ピクニックしていた。会話に耳を傾けると「あの子かっこいい」「いい体だね」…。ロンドンの、もう1つの顔を見た気がした。

 ◆ハムステッドヒース ロンドン市北部にある市営の公園。300年以上の歴史を持つとされ、敷地面積は3・2平方キロ。起伏にとんだ丘陵地に手つかずの自然が残り、ロンドン市民の憩いの場として親しまれる。場内には遊泳池のほかテニスコート、クリケット場など多数の施設がある。映画「ノッティングヒルの恋人」のロケ地にもなった。

 [2012年8月2日8時40分 紙面から]



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