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敗者の美学 五輪コラム 敗者の美学

 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

村上、主将ジンクス破れず予選落ち/陸上

<村上幸史:男子やり投げ予選>

 3度目の五輪。集大成となるべく舞台は、あえなく3投で終わった。男子やり投げ予選。村上幸史(32=スズキ浜松AC)は、3投目に逆転を狙い、顔をゆがめ、雄たけびをあげながら投げた。思いは届かず、77メートル77止まり。80メートルの大台に届かず、2投目の77メートル80が最高でA組14位という結末。まさかの敗退だった。

 調子は悪くなかった。だが記録に結びつかない。「なんでだろう? って疑問ばかり残った。本当に一瞬で終わった」。目には涙がにじんだ。ロンドン五輪選手団の主将。過去4大会、主将はメダルが取れていない。そんなジンクスに「金が期待された選手の話でしょ。僕は違う。サプライズを起こせばいい」。そう笑い飛ばしたが、現実はまさかの予選落ちとなった。

 家族の存在が大きな支え。1人息子の敬汰君(4)は朝起きると自らのリュックで荷造りし、一緒にグラウンドに出かけるのが日課だ。神社やお墓参りに行けば「パパのやりが遠くに飛びますように」と祈ってくれる。「あぁ、遠くに投げるって分かってるんだなって。そういう場面に立ち会うと闘争心に火がつく」。だからこそ、父親として強い姿を見せたかった。

 日大3年から日本選手権を10連覇し、国内敵なし。そこへ今季、ディーンが登場。けがに苦しんだものの、ライバルのおかげで高いモチベーションを持って挑めた。大会前には合同合宿も実現。互いに決勝の舞台で戦うことを誓ったが、思いはかなわなかった。

 アテネ、北京に続く3度目とあって「集大成になると思っていた」。思いが強かった分、ショックも大きい。それでも「機会があるならチャレンジしたい」。4年後までまだイメージはできない。ただ支えてくれる家族、良きライバルがいる限り、終わるわけにはいかない。32歳の本当の挑戦が始まった。【佐藤隆志】

 ◆村上幸史(むらかみ・ゆきふみ)1979年(昭54)12月23日、愛媛県上島町生まれ。生名中-今治明徳高-日大-日大大学院-スズキ浜松AC。09年世界選手権では82メートル97で銅メダル。自己ベストは83メートル95。185センチ、97キロ。家族は妻、長男。

 [2012年8月10日9時21分 紙面から]





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