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 社会部事件担当の石井康夫記者が英国社会の深層に迫る。五輪会場の内外に目を向け、現地住民の反応から、ホスト国の社会問題を多角的に取り上げる。

苦肉の策「五輪レーン」で四輪大渋滞

渋滞多発で大会本番へ不安が残る「五輪レーン」(撮影・石井康夫)
渋滞多発で大会本番へ不安が残る「五輪レーン」(撮影・石井康夫)

 五輪本番を迎えたロンドンで、「地獄の渋滞」が大問題となっている。道路の車線の中で五輪関係車両や各国首脳らVIP専用の「五輪レーン」を作り、25日に運用を開始した。選手らをスムーズに運ぶのが目的だが、これがただでさえ激しい渋滞で有名なロンドンのドライバーを大混乱に陥れている。規制の対象となるのは市内の道路の計175キロで、タクシー運転手らも抗議デモを行った。いよいよ競技が本格化するが渋滞トラブルが心配だ。

 猛暑が続くロンドン。市内で名物のタクシー「ブラックキャブ」に乗ったところ、すぐに渋滞につかまった。英国ではほとんどのタクシーに冷房はついてない。窓を全開にしても、車が走っていないと車中は蒸し風呂状態だ。暑い。たまらず運転手に「動かないから、ここで降りてもいいかな」と問い掛けた。「五輪レーンができて車線が減った。世界中から人が来た。混むに決まっている。ばかばかしい。分かりきったことなのに、こちらは仕事にならないよ」。いまいましげな答えが返ってきた。

 五輪レーンは、慢性的な渋滞に悩む同市が、大会を円滑に進めるために実施した苦肉の策だ。市内計約175キロで交通規制が行われ、そのうちの約48キロは、8万人の選手や関係者らの24時間専用レーンを設けた。規制区間でも大会期間中の午前6時~深夜まで通行禁止のレーンがある。一般車両が走ろうものなら130ポンド(約1万6250円)の高額な罰金が科せられる。

 専用レーンはバス、タクシーも通行できない。これに反発するタクシー運転手らが実施直前にデモを行ったが、怒りの声は届かず。運転手の団体では抗議活動は五輪期間中も続行するとしている。

 現地メディアなどによると運用2日目となった26日は、空港と市内中心部を結ぶ高速道路などで前日以上の大渋滞が発生。五輪組織委ではレーン運用について「問題ない」と自信を見せているが、英紙サンなどによると、ロンドン中心部の通りでは2車線のうちの一方が五輪レーン、もう一方がバスレーンとなっていて、どちらを通っても罰金となる場所もあるという。

 道路を観察していると、渋滞にはまっていた1台がたまりかねたのか、ハンドルを切って五輪レーンを走り始めた。すると続々と後続車が出た。こんな現象が頻発すれば、警察当局は手に負えなくなる可能性もある。

 28日には市内で一斉に競技が本格スタートする。世界からロンドンに集まる観光客は100万人近い。大都市で五輪を開催すると必ず交通の問題が浮かび上がり、ほとんど解決されないまま大会は過ぎていく。もし、2020年に東京で五輪が開催されたら…。そんなことが、頭をよぎった。

 [2012年7月28日7時56分 紙面から]



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