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 社会部事件担当の石井康夫記者が英国社会の深層に迫る。五輪会場の内外に目を向け、現地住民の反応から、ホスト国の社会問題を多角的に取り上げる。

英料理完食 美味しいじゃないか

英国の伝統家庭料理「サンデーロースト」
英国の伝統家庭料理「サンデーロースト」

 世界的に「まずい」という評価が定着している英国の食事。確かに日本でも、同じ欧州のイタリア、フランス料理店はたくさんあるが、イギリス料理の店はあまり見かけない。ロンドンの日本人観光客に感想を聞いても「うわさ通り」「意外とおいしい」との意見が半々ぐらい。実際のところどうなのか。試しに、英国の人々が日曜日の昼に食べるという伝統家庭料理「サンデーロースト」を食べてみた。うまいじゃないか。

 フィッシュ・アンド・チップスと並ぶ英国名物「サンデーロースト」の試食は、ロンドン西部のパブで行った。市内の至る所にあるパブでは、その名の通り、日曜日の昼に限って「サンデー-」を提供する店が多く、売り切れ次第終了となる。店内を見回すと、注文する客がほかにもたくさんいた。結構な人気ぶりだ。

 ロースト肉はビーフ、ポーク、ターキーから選べ、たっぷりの野菜やジャガイモを添えて食べる。特徴は各店が独自で作るグレービーソースと、シュークリームの皮のような独特の食感を持つヨークシャープディングがのっていることで、これがかなりのおいしさ。料金は1人8ポンド(約1000円)。“常識”を覆された思いで完食した。

 世界中からの観光客が集まる今回の五輪で、「まずい英国料理」を見直す声が出始めている。日本人観光客に話を聞くと「日本料理に比べて大味」(大阪府26歳男性)「ジャガイモばかり食べさせられる」(横浜市33歳女性)という根強い批判意見が出る一方、「ロンドンは3度目だが、来るたびに味がよくなっている気がする」(東京都55歳男性)という肯定意見も多くきかれた。

 ロンドンを拠点に活動する料理家ひらぬまゆうこさん(42)は「英国の料理は、ここ数年で相当向上している」という。90年代後半から、日本でも有名なジェイミー・オリバー氏らカリスマシェフが登場したことで、料理番組が急増。それまでの「食」より「衣」「住」に重きを置いた風潮に変化がみられ、徐々にレストラン業界も活発化した。食材、調理法も豊富になり、今ではフランス、イタリア人などからも再評価の声が上がりつつあるという。

 ひらぬまさんは「多くの人種が暮らす英国は、もともといろいろな国の料理が存在する。それがうまくミックスされてきたことで、本当においしくなっていますよ」。ロンドンでは今回が3度目の五輪開催。ようやく世界から「美食の国」の称号を手に入れることができるか。

 ◆サンデーロースト 英国の代表的家庭料理で、大きな皿に厚切りのロースト肉とゆでた野菜などを一緒にのせ、肉の煮汁で作ったグレービーソースをかけたもの。同国では日曜日になると、午前中に教会に行った後で家族そろって食べる習慣があり、子供たちにとっては週で一番のごちそうだったという。昔は骨付きの大きな肉のかたまり(ジョイント)が使われることが多かったため「サンデージョイント」とも呼ばれる。

 [2012年8月7日8時31分 紙面から]



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