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 社会部事件担当の石井康夫記者が英国社会の深層に迫る。五輪会場の内外に目を向け、現地住民の反応から、ホスト国の社会問題を多角的に取り上げる。

レンタル自転車「金」級評価

観光客に人気のレンタル自転車「ボリスバイク」
観光客に人気のレンタル自転車「ボリスバイク」

 五輪も終盤に入り、ロンドン滞在中の観光客は競技観戦と並行して市内観光のラストスパートに入った。その「足」として人気なのが公共のレンタル自転車。五輪期間の渋滞緩和策の1つとしてボリス・ジョンソン市長が導入したことから、通称「ボリスバイク」と呼ばれる。市内約400カ所にある無人ステーションで24時間貸し出し、返却が可能で「最短時間で名所を回れる」と評価は上々。五輪レーンや警備問題など、批判の声が噴出している今大会の運営面で、唯一? の高評価を得ているようだ。

 ロンドンの観光名所で、必ず見かける「ボリスバイク」。毎日自転車通勤を続けるサイクリストとして知られる名物市長の肝いりで2年前に導入され、青い自転車は今ではロンドン名物の1つにもなっている。クレジットカードで身分証明すれば誰でも手軽に利用できるため、多くの五輪観光客が名所巡りの「足」として愛用。テムズ川沿いなどでは自転車がすべて貸し出されてしまい、在庫が1台もないステーションもあるほどだ。

 実際に地下鉄2駅分を利用してみた。日本のママチャリに比べ車体がかなり重く感じるが、走りだせば問題なし。美しい町並みを眺めながら、快適に移動できた。ステーションは地下鉄駅周辺を中心に300メートル間隔で約400カ所あるため、返却する場所にも困らない。料金は1日の契約料が1ポンド(約125円)で、30分以内に返却すれば使用料は無料だ。

 観戦の合間に、友人2人で市内の公園巡りをしたという日本人女性(29)は「地下鉄やバスより全然移動が楽。安上がりだし、時間も短縮できる」と笑顔で話す。カメラを首に下げた米国人男性(33)も「1時間でバッキンガム宮殿やビッグベンなどを一気に回ってきた」。五輪観戦と観光を効率的にこなす秘密兵器として使いこなしていた。

 この「ボリスバイク」は、五輪に向けた渋滞対策の一環として1億4000万ポンド(約175億円)かけ導入されたもの。地元メディアによると、計画当初は「そんなことに大金をかけるな」などの批判も多かったが、登場後の1カ月で市民の長期契約者が7万人を超えるなど大反響を呼んだという。

 渋滞対策のはずが渋滞の元凶となってしまった「五輪レーン」、スポンサー用に用意した座席が大量に空席となるなど、運営面でのさまざまな“失策”が浮き彫りになった今大会だが、これは数少ない成功例か。20年開催を目指す東京も、こればかりは参考にしてよさそうだ。

 [2012年8月9日9時29分 紙面から]



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