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 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

ウィーバー「チームの一員になれ光栄」/体操

<ジョーディン・ウィーバー:女子団体総合予選>

 強国ゆえの悲劇が生まれ、女王が決勝進出を阻まれた。体操女子団体総合予選に出場したジョーディン・ウィーバー(17=米国)は最終種目の床運動の着地でバランスを崩し、足がわずかに場外に出るミス。14・666と得点が伸びず、この種目1位の同僚ダグラスに個人総合で逆転を許すと、みるみる涙目となった。

 ルールの壁に阻まれた。上位24人が予選を突破する個人総合は堂々の4位。だが規定で決勝に進めるのは1チーム最大2人で、予選団体トップの米国は2位にレイズマン、3位にダグラスが入る層の厚さをみせた。昨年の世界選手権(東京)で優勝したウィーバーは0・233及ばず、東欧勢がボイコットした84年ロサンゼルス大会以来、前年女王が決勝の舞台に立てないという大波乱となった。傷心のウィーバーは「少しだけ残念」というコメントだけを関係者に伝え、会場を去った。

 体操が人生だった。母リタさんは「娘の世界は体操を中心に回ってきた。4歳から体操だけを考え、13年間も血と汗と涙を流してきたの」と猛練習の日々を懐かしんだ。選手村ではルームメートのダグラスも姉貴分と慕っており、「ショックです」と今にも泣きそうだった。

 ただ金メダルのチャンスは残っている。団体総合決勝と種目別の床で出場権を得た。「(個人総合の)アリ(レイズマン)にはベストを尽くしてもらいたい」と激励し、自身のツイッターでは「この気持ちを表現するのは難しいけど、五輪選手とこのチームの一員になれたことは、すごく光栄です」と決勝の演技に気持ちを切り替えた。

 ◆ジョーディン・ウィーバー 1995年7月12日、米ミシガン州生まれ。09年のアメリカン杯で個人総合に優勝し、シニア大会での初タイトルを獲得。11年から代表メンバー入りし、東京で開催された昨年の世界選手権では団体、個人総合で2冠に輝き、種目別の平均台では銅メダル。158センチ、52キロ。

 [2012年7月31日9時22分 紙面から]



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