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コラム Nikkan Olympic Column
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 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

ガトリン銅「何も言えねぇ」/陸上

<ジャスティン・ガトリン:男子100メートル決勝>

 ボルトとブレークのジャマイカコンビが歓喜に沸いた男子100メートル決勝。この2人の陰で、元金メダリストが銅メダルの喜びをかみしめた。ジャスティン・ガトリン(30=米国)。五輪舞台に再び、はい上がってきた。

 「金は金。銅は銅。だけど、この銅メダルにたどり着くまでのことを考えると…、何も言えねぇ。オレにとって、大きな意味があるんだ。ここにいられて、幸せだよ」

 8年前のアテネ五輪で金メダルをさらったガトリンは、翌年の世界選手権で200メートルも含めて2冠。栄華を極めたが、06年にドーピング検査で禁止薬物の筋肉増強剤(テストステロン)の使用が発覚した。01年に続く再犯で、永久追放の可能性もあったが、調査協力を約束し、出場停止は8年間に軽減された。

 競技人生は、終わったかに思われた。違反が発覚する直前にマークした世界記録は、抹消された。高校時代の経験を生かし、NFLの入団テストを受けたこともある。迷走しかけたが、米政府のドーピング関連調査への協力的な姿勢が認められ、08年になって処分が4年間に縮まった。08年北京五輪には出場できなかったが、10年7月には復帰戦に臨んでいた。

 昨年の世界選手権は準決勝敗退。今年2月に30歳になった。あきらめない姿勢で、今年6月の全米選手権を制した。9秒80は世界歴代7位、8年ぶりの自己ベストで、ロンドン五輪へはずみをつけていた。

 「8年ぶりに五輪に戻ってきて、神に与えられた才能を発揮することができて最高の気分だ」。大舞台で0秒01、自己記録も更新した。かつて獲得したメダルとは色が違うが、達成感を漂わせた。

 [2012年8月7日9時45分 紙面から]



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