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コラム Nikkan Olympic Column
敗者の美学 五輪コラム 敗者の美学

 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

第2の故郷に見せた積極ラン/陸上

<久保倉里美:女子400メートル障害準決勝>

 傷ついた「第2の故郷」のために走った。女子400メートル障害準決勝3組。久保倉里美(30=新潟アルビレックス)はスタートから飛び出した。だが第2コーナーを回ってから失速。ラストの直線、もう力は残っていなかった。予選の55秒85を大きく下回る56秒25で、同組8着。夢見た決勝進出はかなわなかった。

 「前半行けるところまで行く。勝負するにはこれしかなかった」。北京に続き、2大会連続の準決勝。積極的な姿勢は光った。

 北海道生まれだが、もう12年間も福島に暮らす。福島大卒業後も拠点は変えなかった。そこへ、昨年3月11日の東日本大震災で福島第1原発事故が発生。高い放射線量が検出され、グラウンドの使用は禁じられた。練習を再開しても、落ち着いて練習できる環境ではなかった。

 「4年間を振り返ると、何度も逃げ出したいなってことがあった。ただ応援してくれる人がいたので」。スピードと持久力が試される過酷な競技を30歳の今も続ける。「簡単なことではなかった。でも福島大でやってきて本当によかったなと思います」。多くの試練を乗り越えたからこそ、心からそう思える。

 ◆久保倉里美(くぼくら・さとみ)1982年(昭57)4月27日、北海道旭川市生まれ。旭川北高-福島大。400メートル障害で55秒34の日本記録保持者。08年北京五輪、11年世界選手権、今回の五輪と3度、世界で準決勝まで進出。161センチ、52キロ。

 [2012年8月8日9時43分 紙面から]



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