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コラム Nikkan Olympic Column
敗者の美学 五輪コラム 敗者の美学

 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

岩尾先生「充実」の夏終わる/ホッケー

<岩尾幸美:女子ホッケー>

<ロンドン五輪・ホッケー:日本2-1南アフリカ>◇8日◇女子9-10位決定戦

 岩尾先生の熱い夏だった。ホッケー女子の日本は順位決定戦で南アフリカに勝ち、9位でロンドンでの戦いを終えた。アテネで8位、北京は10位。3大会連続出場のMF岩尾幸美(36=GREEN Deers)は「ホッケーだけじゃなく周囲を見渡すことができて、心身ともに一番充実していました」と笑顔だった。

 母校の大分・九重町立野上中の保健体育の先生だ。「夢だった」教師になって10年目。女子バレー部の副顧問は「夏休みでもみなさん部活とかで出勤している。頑張らないと」と意気込んだ。勤務後に車を30分走らせてクラブチームで練習し、週末は実業団の補強選手としてプレーする。

 後藤健児校長は「朝7時には学校に来て、出るのは夜の7時半。決して弱音をはかない」と言う。選手村には同僚と各学年の生徒のメッセージ入り日の丸が4枚飾られていた。同校は本年度末で統合される。「有終の美じゃないけど少しでもいい形で」と燃えた。

 さくらジャパンでも先生になる。「世界と戦うには精神力もたくましくないと。一定の水準を引き継ぐのが代表選手の責任」と気付いたことはズバズバ言う。5月の世界最終予選でMVPに選ばれた。「口うるさい生活指導のおばちゃんなのに」と大泣きした。懸命に雰囲気づくりする先生の涙にチームメートももらい泣き。嫌われ役でも、愛情のある指導は伝わる。

 チームで最も低い152センチで頑張ってきた。36歳、4年後どうするのか。「リオ? ハハハ。校長先生には、そろそろ(辞めたら)って言われてるんです。でも最近思うんです。人間って本気になれば何でもできるんですね」。帰ったら、生徒に話したい土産話がいっぱいある。【近間康隆】

 ◆岩尾幸美(いわお・さちみ)1976年(昭51)2月20日、大分・九重町生まれ。森高でホッケーを始め、天理大へ進学。04年アテネ五輪と08年北京五輪代表。06年W杯5位。好きな言葉は七転八起。152センチ、53キロ。血液型O。

 [2012年8月9日10時57分 紙面から]



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