日刊スポーツのニュースサイト、ニッカンスポーツ・コムです。



コラム Nikkan Olympic Column
敗者の美学 五輪コラム 敗者の美学

 勝者がいれば、必ず敗者がいる。「敗者の美学」では日本人選手はもちろん、海外の選手も含めた「敗者」の人間ドラマをクローズアップ。記者が思い入れたっぷりに語ります。

3投敗退…ディーン即リオトレ/陸上

<ディーン元気:男子やり投げ決勝>

 陸上男子やり投げで、期待のディーン元気(20=早大3年)は79メートル95の10位に終わった。3投中ファウル2つという不本意な内容で、8人で争う4投目以降に進めず。それでも競技中の選手を横目にピッチ上でイメージトレーニングを繰り返した。「第2の故郷」でほろ苦さを味わった新星は「次は絶対、金メダルを取るという気持ちが強くなった」と話し、16年リオでの雪辱を誓った。

 3投目を終え79メートル95の記録で10位となり、敗退が決まった。それでも動きを繰り返した。「なんでだろう。こうやればよかった、って。イメージをめぐらせやりました」。

 大会前、00年シドニーに初出場した室伏広治の姿を自らに重ねた。「すごく緊張していた。うるさいから『シーッ』というポーズを取っているのが印象的。自分のペースを保てないぐらいの場所なんだなと思った」。だが、実際は緊張感はなかった。五輪2度金メダルのトルキルドセンに話しかけ、Tシャツをもらった。

 母博子さんが言う。「父親の母国である大会に出られることは、次のリオに出るのとまったく違う」。ディーンは少年時代、母にたずねた。「なんで、うちはお父さん日本人やないの?」。だが、自らの境遇を受け入れながら成長し、20歳の節目で迎えたロンドン五輪。運命を感じずにはいられなかった。

 優勝ラインは84メートル台。自己ベストが更新できれば、表彰台は手の届くものだった。「このレベルは低い。悔しい思いをしてよかった。金を取りたい気持ちが強くなった」。90メートル台の夢も描く男。ディーンによる五輪をめぐる壮大なストーリーは、ロンドンから始まった。【佐藤隆志】

 [2012年8月13日9時25分 紙面から]



最新ニュース

記事一覧

[an error occurred while processing this directive] [an error occurred while processing this directive]