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コラム Nikkan Olympic Column
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 荻島弘一編集員による日々の話題、トピックスなどを取り上げる社会派コラム。これまでの取材経験や過去の五輪取材などを絡め、批評や感じたことなどを鋭く切り込む。

サッカーがあってよかった

 深夜のサッカーに熱くなった。決勝に進んだ女子に続いて、男子も準決勝で聖地ウェンブリーのピッチを踏んだ。メキシコに敗れたものの、3位決定戦で韓国とメダルをかけて戦う。つくづく五輪にサッカーが残って良かったと思う。

 五輪サッカーの危機は、09年にあった。国際サッカー連盟(FIFA)は同年3月の理事会で「五輪は21歳以下で」という案をまとめた。各クラブ主力の23歳では、招集が難しい。南米や欧州を中心に若返らせる動きがあった。しかし、2カ月で改正案は見直しへ。アジア、アフリカなどから猛反発に遭ったからだ。

 当時、国際オリンピック委員会(IOC)プログラム委員だった岡野俊一郎氏は「21歳以下なら、五輪から除外された」と話す。欧州や南米に「五輪はもういい」という強硬意見もあったが、アジアやアフリカは五輪競技かどうかが普及や強化の面で大きい。結局、これまでと同じ条件で、サッカーは五輪に残った。

 多くの競技は五輪重視だが、サッカーだけは違う。1908年大会で正式競技になるもプロの参加が認められず、かつては東欧諸国がメダルを独占した。五輪憲章からアマ規定が外れ、80年からプロ参加も「W杯経験のない選手」に制限。92年からは「23歳以下」の規定に変わった。「最高の選手の参加」を求めるIOCと「最高なのはW杯」のFIFA。両者の綱引きが出場条件を変えてきた。

 五輪は「2軍」のイメージが強い。特に欧州では直前に欧州選手権もあり、注目度は低い。それほど準備もしないから、アジアやアフリカ、北中米諸国が勝ち上がることも多い。今回も4強に欧州は0。大陸による「温度差」は大きい。普及のためにFIFAが五輪採用を熱望した女子は「W杯よりも五輪」で、男女でも全く環境が違う。

 それでも、男子のベスト4入りは大きい。団体球技は1日で終わらず、試合が続く。好結果と次への期待が五輪を盛り上げる。今回は日本が過去にメダルをとってきた野球とソフトボールが除外された。日本選手団の上村団長は「球技の成績は、日本全体の成績に響く」と話していたが、男女サッカーに女子バレーも4強入り。終盤、球技が日本を盛り上げてくれそうだ。【編集委員・荻島弘一】

 [2012年8月9日10時58分 紙面から]



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