五輪に3度出場、世界選手権で2度銅メダルを獲得し、先ごろ引退したばかりの侍ハードラーが、独自の視点から五輪を斬る。社会派アスリートが現地で 見て、感じた世界最高峰の戦いを語る。
管理型から脱却し自立した選手出よ
お家芸と言われた女子マラソンが、メダル・入賞なしに終わった。選手たちは精いっぱい努力したと思うのだけど、残念ながら少し世界との差が開き始めているように思う。いろんなところでその原因が語られているが、実際のところは一体どこに手を突っ込めばいいのか。
この十数年で学校法人のスポーツに対しての意識は変わってきている。教育の一環という考え方から、広告塔としての捉え方に変わってきていて、長距離選手も例外ではない。奨学金で引っ張ったり、全額学費補助、その他さまざまな特典で選手を勧誘する。目的は在学中の競技成績、つまり駅伝での成果だ。
駅伝というコンテンツの威力が強いために、女子の長距離は陸上競技の中でも早い段階で強化が本格化する。中学、高校あたりから競技を中心とした生活を送り始め、寮生活をすることも多い。
短期間で成果を出そうとすれば、ある程度、管理主義的にチーム作りをする方がうまくいくことが多い。でも長期的にみると選手はさまざまな経験をして、いろんな人の考え方を吸収して、人格的に成長した方がいい。失敗も、はしかを患うようなものだから早い方がいい。でも学校スポーツは3年ごとに結果を出すのが重要だから、結果として選手たちはかなり生活を管理されたところで競技生活を送っている。
僕の友人も実業団に所属していたけれど、寮生活は必須で、私用で外出する際も目的と帰宅時間を申告することが義務づけられていた。男女交際も禁止で、20歳を超えているにもかかわらず、チームには彼氏がいることを秘密にしていた。
長距離界が伝統的に持つ管理型システムは、純粋に競技に没頭する多くの選手たちを生んできたけれど、それだけ世間を知らない選手たちを作ってもきた。ここにきて世界のレベルが数段アップする中、型にはめる管理システムは限界がきているのではないだろうか。
ヨーロッパでグランプリを回っていた時、たった1人でバックパックを担いで試合にきているアメリカの長距離選手がいた。出場料を交渉して次の試合会場までの旅費を稼ぎ、渡り歩く。コーチやトレーナーをつけるお金もないから、全部1人でこなしていた。数年後、五輪代表になっていた彼女と話をした。やっとスポンサーがついたのよと笑っていた。グランプリで彼女のような選手たちに数多く出会ったが、1人で試合に出ている日本の長距離選手に出会ったことはほとんどなかった。
事はそう簡単ではないのはわかる。でも彼女たちの引退後の人生、そして本当の意味で強い選手を作り出すには、管理型から自立型にかじを切るしかないのではないか。
人間はほっておけば怠けるものだという前提で作られたシステムから、人は自分で自分をコントロールできるという信頼の上で新しいシステムが作られることが大切だと、僕は思っている。
[2012年8月8日9時42分 紙面から]
最新ニュース
- 速報ボクシング村田 プロ転向「ゼロに近い」[20日20:29]
- 速報3連覇の吉田、伊調を特別表彰[20日20:27]
- 速報室伏「IOCに選んでいただけるなら…」[20日20:24]
- 速報五輪ネット中継アクセス2600万件[20日19:26]
- 速報沢「感動。重みのあるメダルを取れた」[20日19:17]
- 速報凱旋パレード、ファン30人が病院搬送[20日18:47]
- 速報三宅「体休めて充電し、来年に備えたい」[20日18:42]
- 速報吉田、世界10連覇&カレリン超えに挑戦[20日17:57]
- 速報柔道・松本「金メダルで恩返しできた」[20日17:55]
- 速報吉田沙保里「すごく気持ち良かった」[20日17:55]
- 速報内村パレードで「ちょっとアイドル気分」[20日17:45]
- 速報愛「初めてあんなに多くの人見た」[20日17:38]
- 速報五輪メダリストが銀座で華やかにパレード[20日12:50]
- 速報400mメドレー銅の上田「ドンキで…」[19日21:46]
- 速報村田金に見直し要請 ブラジル五輪委[18日16:27]
- 紙面体操ニッポン、全国5都市で凱旋ツアー[18日10:04]
- 紙面佳純ちゃ~ん!1万人人力車パレード[18日09:22]
- 紙面米満、凱旋報告で「連覇」宣言[18日09:21]
- 紙面「松本は、勝つたびにきれいになる」[18日08:48]
- 紙面竹島プラカード男「表彰台上がれず残念」[18日06:58]