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伊調、じん帯切れてもV3/レスリング

左足をテーピングで固め、景瑞雪(左)を攻め込む伊調(撮影・たえ見朱実)
左足をテーピングで固め、景瑞雪(左)を攻め込む伊調(撮影・たえ見朱実)

<ロンドン五輪:レスリング>◇8日(日本時間9日)◇女子63キロ級決勝

 行けるぞ、4連覇! 伊調馨(28=ALSOK)が日本女子初の3連覇を果たした。ロンドン到着後に左足首の靱帯(じんたい)を切る重傷を負ったが、決勝でも昨年世界3位の景瑞雪(中国)を圧倒。1ピリオド(P)も失わず3度目の頂点に立った。4年後の16年リオデジャネイロ五輪への挑戦もにおわせた。

 笑っていた。伊調は最高の笑顔で表彰台のてっぺんに立っていた。とても近い観客席。1人1人の顔が見えた。姉千春さんの姿も。前人未到、日本女子初の五輪3連覇を果たして「3連覇を目指してやってきたわけじゃないけど、金メダルを3個取ったんだなと。なんだか年を取ったって感じがしますね」とおどけた。

 笑顔の裏に、重傷を隠していた。ロンドンに到着した翌4日の初練習で左足首をひねった。構えたときに初動を生む大事な蹴り足が「3本の靱帯のうち1本半が切れた」。スパーリングは1度もできなかった。選手村の部屋で治療。前日は炎症止め、この日は痛み止めの注射を打ち、テーピングで固めていた。「よりによって今かというのがあった」。

 それでも強さは際立っていた。北京五輪から変えた攻撃的スタイルで次々と技を繰り出す。決勝の景戦では第1P約30秒で鮮やかな両足タックルを見舞った。フェイントを掛けてからの低い飛び込み。「あんなにきれいなのは4年に1回ぐらいかも」。3点を奪うと流れは決まった。終わってみれば1Pも落とさない圧勝劇。「強い人たちとやって、難しさと面白さと、楽しさを味わえた。やっぱりレスリングって楽しいな」と無邪気に笑った。

 千春さんと「姉妹で金」を目指した北京五輪までは勝つことがすべてだった。夢破れ、姉は実家の青森・八戸に戻った。自らは10年に都内に拠点を移したが、生活は1人。後に「最初は寂しかった」と姉に打ち明けた。そこで初めて男子の練習に飛び込んだ。まるで別世界だった。男子代表の田南部コーチに「なぜ今、その技を掛けた」と問われても「勘で…」としか答えられない。理論がなかった。「レスリングを知った気になっていたけど、まったく知らなかったと思い知らされた」。

 練習場所も相手も、自分で探さなければならない。2人1組の練習は、ぽつんと1人余っていた。最初は相手にしてもらえなかった。それでも休まなかった。生まれて初めてレスリングノートもつけた。絵を描き図解で分かりやすくした。少しずつ身についた高度な技術。決勝で見せた両足タックルの流れもそこで学んだ技。動けなかった分、選手村のベッドでイメージした動きだった。「アテネ、北京と、よく金メダルを取れたと思う」。守り勝つスタイルから攻めへ。見違えるように変わった。

 07年アジア選手権のケガによる不戦敗を除けば、03年から153連勝。それでも3つめの金メダルを取ったこの日「満足いく試合は一生ないと思う」と言った。だからまだ、レスリングを追い求める旅は続く。それは4年後も。「北京からあっという間だったので、リオもすぐ来るんじゃないかな。出られるなら出てもいいかな…って自分が決めることじゃないですね」。男子も含めて日本人初、世界でも女子初となる4連覇へ-。可能性は十二分にある。【今村健人】

 ◆五輪の連覇 個人種目で最多記録は陸上男子走り幅跳びのカール・ルイス(米国)ら3人が持つ4連覇。女子選手としては体操種目別床運動のラリサ・ラチニナ(ソ連=当時)らが3連覇で並び、馬場馬術のアンキー・ファンフルンスフェン(オランダ)は今大会での4連覇を逃した。日本選手の最多記録は柔道男子の野村忠宏(ミキハウス)の3連覇。レスリングでは男子グレコローマンスタイル130キロ級(当時)のアレクサンドル・カレリン(ロシア)が3連覇を達成。団体種目ではフェンシング男子サーブルでアラダール・ゲレビッチ(ハンガリー)が6連覇を成し遂げている。

 [2012年8月10日9時30分 紙面から]





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