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古川、山本先生以来の銀/アーチェリー

決勝で矢を放つ古川(共同)
決勝で矢を放つ古川(共同)

<ロンドン五輪:アーチェリー>◇3日(日本時間4日)◇男子個人

 世界ランク32位の古川高晴(27=近大職)が銀メダルを獲得した。決勝では同8位で昨年の世界選手権銀の呉真■(韓国)に1-7で敗れたものの、同種目の日本勢のメダル獲得は、04年アテネ五輪銀の山本博以来4度目。マジメ人間が「不真面目」になってリラックスし、「三度目の正直」で念願のメダルをつかんだ。今大会で日本女子が団体で初の銅メダルをつかむなど、アーチェリーの快進撃が続いた。

 最後に力尽きた。ロンドンの気まぐれな風に吹かれながら、古川は笑顔で王者に拍手を送っていた。19歳で出場した04年アテネ大会から、3大会連続となった五輪の舞台。「ベスト8が目標」だった男が、一気に表彰台まで駆け上がった。左手で花束を持ち上げ、右手に持った銀メダルを誇らしげにスタンドへ見せる。黒縁メガネに柔らかな笑みを浮かべながら、古川は早口で声を弾ませた。

 古川 うれしいですけど、最後はちょっと悔しい。最後は正直、切れてしまった…いや、切れてないですよ。当たって砕けろの気持ちでした。今回は(決勝まで韓国の選手と対戦しなかったので)運が良かった。ラッキーでした。必死こいてやってきました。肩に重圧がかかっていたのが、今は首にずっしりかかっていますね。

 見せ場は準決勝ファンデルフェン(オランダ)戦だった。一進一退の激しい攻防で迎えた最後の1射。満点の10点でないと負けの場面だった。「力を抜けていけた」。10点を射抜いてポイントを5-5にした。シュートオフ(延長戦)では再び10点。相手が9点に終わり、この時点で銀メダル以上を確定させた。

 近大2年の04年アテネ大会の代表になった。個人戦は2回戦で敗退。その大会で山本が銀メダルを獲得した。「めちゃ悔しかったです。ライバルが勝ち上がって、悔しくて悔しくて」。表彰台を夢見たが、08年北京大会は1回戦敗退。昨年のW杯では17位に沈み、五輪出場を決められなかった。

 昨年末、恩師の近大・山田秀明監督(61)にアドバイスされた。「ここぞという場面で力を抜けよ」。同監督が「石橋をたたいても渡らないタイプ」というマジメさが妨げていた。自己啓発のために大リーグのイチローの言葉を拾い上げ、北島康介を育て上げた競泳の平井コーチの本を読んだ。「ここで終わりと思うと、その手前で終わると。これはアーチェリーにも通用する」と貪欲になった。一方では勝負どころほど「負けてもいいや」と言い聞かせ、実力を発揮した。

 団体戦銅の女子の活躍にも「悔しかった」と奮起した。アスリートというより、ビジネス街にいそうな風貌で強い心と熟練された技を見せつけた。「経験が一番だと思います。前回、前々回は足が震えた。うん、楽しんでできましたね」。真っ黒に焼けた顔でニッコリ笑った。10点満点の笑顔だった。【近間康隆】

 ◆04年アテネ五輪VTR 当時41歳だった山本博が男子個人で銀メダルを獲得した。84年ロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得してから20年たち、さらに1つ上のメダルを獲得。“中年の星”と呼ばれ、「20年かけて銅から銀へとなりました。これから20年かけて金を目指します」と名言を残した。

※■は、火ヘンに赤二つを横に並べる

 [2012年8月4日9時2分 紙面から]



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