美里初戦最強の敵、北京で敗れたアン濃厚

　五輪での借りを五輪で返すときが来た。ロンドン五輪柔道の組み合わせ抽選が２６日、試合会場エクセルで行われ、女子５２キロ級の中村美里（２３＝三井住友海上）は初戦２回戦で、北京五輪準決勝で敗れたアン・グムエ（３２＝北朝鮮）と対戦することが濃厚となった。園田隆二監督が「この階級で一番」と呼ぶ強敵と、いきなり激突。雪辱を果たし、悲願の金メダルへの道をひた走る。

　事実上の決勝戦が、いきなりやってくる。この４年間、中村は銅メダルに終わった北京五輪の雪辱だけを胸に秘めてきた。ようやく決まった組み合わせで、その機会が回ってきた。北京で敗れたアンと、初戦で当たることが濃厚となった。園田監督は「厳しい戦いになると思う。ちょっとしたことで試合の流れが変わるので、気をつけないといけない。でも、美里は力ありますから。厳しい中でもやってくれる」と期待した。

　中村が「何もできなかった」と振り返る北京五輪準決勝。力もスピードも圧倒されて、なすすべなく敗れた。３位決定戦で勝って平成生まれ初のメダリストに輝いたが「金以外は同じ」と悔やんだ。以降、１０年アジア大会、昨年世界選手権で対戦して、ともに雪辱した。だが「五輪の借りは五輪でしか返せない」と言い、喜びはなかった。

　北京から４年。中村は自らを「当時とは比べものにならないほどレベルアップしている」と言ってのける。世界選手権を３度経験し、うち２度を制した。減量苦のため４８キロ級から階級を上げたばかりで、世界大会を何も経験せずに出場した北京とは、何もかも違う。そこで再び、宿敵と相まみえることができる。前回銀メダルのアンは１回戦で格下の英国選手と当たる。準備万端の雪辱の舞台は、確実に回ってくる。

　園田監督から「１発目で引き当てたぞ」と伝えられ、徳野コーチにも「対策をやってきた分、出せるからいいじゃねえか」と言われた中村は、笑っていたという。同監督は「１発目なんで準備段階が重要。１試合分の（ウオーム）アップをしないといけない。ただ、対策してきた相手とやれるんで良い。ここを勝てば準決勝、決勝が楽になる」。警戒しつつも、心配はしなかった。「何か言わないといけない選手ではない」。全幅の信頼を受けて、中村の金メダルへの道が始まる。【今村健人】

　◆中村美里の北京五輪　女子５２キロ級で２、３回戦を突破し迎えた準決勝。アン・グムエと対戦し、相手が奥襟を取って圧力をかけてきたが、中村は十分な組み手になれないまま指導ポイントを取られて敗れた。３位決定戦で銅メダルを獲得し、平成生まれの日本人初のメダリストとなったが「金メダル以外は同じ」と笑顔はなかった。

　◆五輪の柔道競技　男女とも７階級で実施。２８日に男子６０キロ級、女子４８キロから始まる。中村の出場する女子５２キロ級は２９日に行われる。

　［2012年7月27日9時14分　紙面から］