実はお笑い好き美里、金あたりまえ～

　柔道女子５２キロ級の中村美里（２３＝三井住友海上）は、心に笑いを持って勝つ。五輪に向けて、大好きなお笑いコンビのＣＯＷＣＯＷ（カウカウ）から人気ネタ「あたりまえ体操」のＤＶＤを贈られていたことが２７日、分かった。「笑わない柔道家」とみられているが、素顔は大のお笑い好き。初戦２回戦で、北京五輪準決勝で敗れたアン・グムエ（北朝鮮）との対戦が濃厚な中、事実上の決勝戦に向けて「美里が強いのあたりまえ～」の精神で挑む。

　決戦を目前に、ほんの一息。そのための「リラックス道具」を、中村はロンドンに持ち込んでいた。大好きなお笑いコンビＣＯＷＣＯＷの「あたりまえ体操」ＤＶＤ。２５日に発売されたばかりだが、２２日に日本を出発する前、関係者を通じて届いた。本人と面識はない。だが、好きだと公言し「あたりまえ～」と口にするほどのお気に入り。そんな“情報公開”が実った。「すごいうれしい。新作ですよ。言っていて良かった。みんなでそろそろ見ようかな」と感激していた。

　５２キロ級の金メダル候補は、一般に「笑わない柔道家」として認識されている。確かに柔道では、勝っても喜ばない。五輪金メダルという目標達成以外、笑わないと決めている。だが、畳を下りればその姿は一変。「結構、笑っているんですけど…」という素顔は、誰よりもお笑いが好物だ。

　高校時代、パンの耳をパン粉で揚げてソースをまぶし、さらにパンで挟むサンドイッチを製作。先生や友人に「カツサンド」と言って食べさせて「おいしい」と言わせたことがあった。ピン芸人日本一を決める「Ｒ－１ぐらんぷり」をチェックし「ヒューマン中村」といった、まだ無名に近い芸人も知っている。６月の釧路合宿で誕生日ケーキを振る舞われた６３キロ級上野の顔に、ケーキを押し込むよう振ったのも中村だった。

　試合日２９日の組み合わせが決まり、北京五輪準決勝で敗れた同五輪銀メダリストのアンが入ってきた。初戦２回戦で対戦する可能性が高い。園田監督が「この階級で一番強い相手」という難敵とは、事実上の決勝戦。気は抜けない。だからこそ、緊張をほぐすＤＶＤは何よりの良薬になる。あたりまえ体操の特にお気に入り「や～め～ろ～や～」のフレーズとパフォーマンス通り、アンをきっちり振り払う。そして、金メダルへの道を、当たり前のように駆け上がる。【今村健人】

　［2012年7月28日8時39分　紙面から］