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エース穴井も負け男子金ゼロ危機/柔道

チェコのクルパレクに抑え込まれる穴井(撮影・田崎高広)
チェコのクルパレクに抑え込まれる穴井(撮影・田崎高広)

<ロンドン五輪:柔道>◇2日◇男子100キロ級2回戦

 日本柔道が「惨敗」の危機を迎えた。男子100キロ級の穴井隆将(27=天理大職)と女子78キロ級の緒方亜香里(21=筑波大)はともに2回戦で敗れ、敗者復活戦にも回れなかった。男女ともメダルを逃すのは、前回北京五輪男子100キロ級の鈴木桂治と女子78キロ級の中沢さえ以来。特に男子はここまで1つも金メダルがなく64年東京五輪以降、参加した大会で初めて金メダルゼロで終わる崖っぷちに追い込まれた。最終日100キロ超級の上川大樹(22)に託すのみとなった。

 穴井は1人では歩けなかった。涙が止まらず、放心状態。井上コーチが何とか支えていた。すぐには話せずに1度、控室に戻った。試合終了から1時間後に姿を見せたときもまだ、涙が流れていた。「自分の力が足りなかった。これが勝負だと思います。勝てなくて申し訳ありませんでした」と、涙をしゃくり上げながら話した。

 身長198センチ、昨年世界選手権3位のクルパレク(チェコ)にあっけなく組み敷かれた。相手のともえ投げはこらえたが、上に乗った形を簡単にひっくり返された。崩れ横四方固めで25秒間、ずっと天井を見させられた。「自分自身の我慢が足りなかったから抑え込まれた」。一本負けを宣告するブザーを聞くと、頭の中が真っ白になった。「終わったんだと思いました」。計2試合たった7分59秒で、エースの期待を背負った男の五輪が終わった。

 「調子は良い。集中してやれている」と、ロンドン入り後も絶好調を宣言していた。だが、同様に選手の状態の良さを見ていた全柔連会長で日本選手団の上村春樹団長は「選手は調整の良さに満足してしまった」と指摘した。「外国人選手が組み手を厳しくしてくるのは当たり前で分かっていたこと。なのに持たせてもらえず慌てる。自分自身に負けている。もっと自信を持て」と厳しく言った。

 前日4日目まで金メダルが1つもなかった。09年ロッテルダム世界選手権と同じ状況。当時も責任をかぶった穴井には、極度の重圧がのしかかっていた。「ゼロというのは何も考えていなかった。1人1人が一生懸命戦って、私の日までつないできてくれた」。そう否定したが、篠原男子監督は「プレッシャーはあったと思う。1つでも取れていたら穴井も思いきった柔道をできていた。その状況をつくり出した私に責任がある」と受け止めた。

 これで男子=日本柔道はいよいよ追い込まれた。64年東京大会で初めて行われてから、日本が参加した10大会で、男子が金メダルを逃したことは1度もない。命運は“消去法”で代表に選ばれたとやゆされる100キロ超級の上川に託された。準決勝で世界選手権4連覇のテディ・リネール(フランス)と当たる組み合わせ。勝てる確率は、高くない。上村団長は「まだ1日、頑張らせる」とだけ言った。篠原監督は「結果が金でも銀でも、しっかり自分の柔道をして悔いの残らない試合をしてもらいたい」と言った。日本柔道の落日が、目前に迫った。【今村健人】

 [2012年8月3日8時49分 紙面から]



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