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ロンドン移動 男ビジネス女エコノミー

 日本サッカー協会が、ロンドン五輪代表の男女の移動便に格差を付ける“失態”を犯したことが5日、分かった。両代表は11日に国立で壮行試合を行い、16日の早朝に同じ便で欧州へ出発する。航空券はJOC(日本オリンピック委員会)がエコノミー席を手配し、サッカー協会が競技力向上のため、独自で席をアップグレードしたが、男子はビジネス席、女子はプレミアムエコノミー席を用意。長年続いてきたサッカー界の慣例をそのまま適用し、男女に差をつけてしまった。

 金メダルの期待がかかるなでしこが、いきなり落胆しそうな現実を目の当たりにする。男子がフラットにシートが伸びるビジネス席でゆったり渡欧するのを、ワンランク下の120度程度しかシートが倒せないプレミアムエコノミー席で眺めながら、約12時間のフライトに耐えることになった。

 日本協会関係者は「プロ選手で構成される男子は、(96年)アトランタから五輪本番はビジネスと決まっている。女子はアマチュアだったし、体格もそれほど大きくないので、今まではエコノミーが慣例だった。でも今回はメダルの期待とファンの注目度も高いので、少しグレードを上げてプレミアムエコノミーシートにした」と話す。

 アップグレードの予算も、男子の約1200万円に対して、女子は約200万円。今まで男女が同じ便で現地に向かったことはなく、なでしこから不満の声は出なかった。しかも女子サッカーは昨年W杯で優勝するまで注目されなかったこともあり、男女で差があっても、異論を唱える声は上がらなかった。しかし今回は偶然にも同便となり、待遇を比較せざるを得ない状況だ。

 なでしこにとって、ロンドン五輪は初のメダルがかかる大事な大会。前年W杯優勝という実績からすれば、金メダル獲得も夢ではない。一方の男子は1次リーグ突破も厳しいのが現状だ。それなのに慣例通りの差をつけたことは、なでしこのモチベーション低下につながる可能性もあり、日本協会の失態と言われてもしかたがない。

 今回、男女代表が利用する飛行機は、ビジネスシートが56席で、男女同時に席を確保することが難しかったことは事実。ただそれなら別便で出発するなど、解決策はあったはずだ。長年続いた慣例に従い、積極的に格差を解消する努力は見られなかった。

 オーバーエージを除けば、男子は23歳以下で構成される。33歳の沢穂希を筆頭に、ほとんどの選手が23歳以上のなでしこは、サッカー界の後輩たちをどんな気持ちでみながら「戦場」に向かうのだろうか。男子も心は休まらないはずだ。

 なでしこは、世間の無関心に打ち勝って、W杯で大きな花を咲かせた。今回も、そのたくましさに期待するしかない。【盧載鎭】

 ◆シートの違い 男子代表のエグゼクティブ(ビジネス)シートは、完全にフラットなリクライニングが可能なシートを採用。10・4インチテレビモニターと高音質ノイズキャンセリングヘッドホンを完備。女子代表のプレミアムエコノミーシートは、従来のエコノミーよりはリクライニング可能で、レッグレストがある。テレビモニターは9インチ。日本からロンドンの正規運賃はエグゼクティブが約75万円、プレミアムエコノミーが約50万円。

 ◆他競技の移動事情 基本的にはバレーボールや柔道を含め体格差に関係なく選手全員がエコノミークラスを利用する。ただし、差額を負担してビジネスクラスを利用する選手もいる。男子体操は協会が負担してビジネス利用(女子はエコノミー)、テニスも個人負担でビジネスを使う選手がいる。競泳は北京大会の時に派遣標準記録S(メダル圏内)を切った選手をビジネスで移動させたが、今回は見送り。ただ、個人負担でアップグレードする選手もいるという。また、基本的に航空運賃は往復も片道も変わらないため、成績によって帰途だけビジネスというような例はない。

 [2012年7月6日6時47分 紙面から]



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