なでしこ岩渕がベッカム流復活

　なでしこジャパンのＦＷ岩渕真奈（１９＝日テレ）が、「ベッカム治療器」でロンドン五輪初戦カナダ戦（２５日）での完全復帰を目指す。９日、千葉県内でスタートした五輪代表合宿の宿舎に「超音波骨折治療器」を持ち込んだ。０２年Ｗ杯日韓大会直前に左足を骨折したイングランド代表ＭＦデービッド・ベッカム（３７）が、この治療器を使って奇跡的に回復したことで有名に。岩渕は１月に右足小指の骨折が判明して手術を受けた。復帰したものの６月１０日の試合で再び痛めて離脱していたが、「切り札」として選出してくれた佐々木則夫監督（５４）の信頼に応えるため、ベッカムのように本番での復活を期す。

　岩渕がＷ杯ドイツ大会以来、約１年ぶりにチームに戻ってきた。右足第５中足骨の患部はまだ痛むが、ミニゲームでは右足を強く振り抜いてゴールも決めた。「１年前に比べて成長してなかったらヤバイ。ミニゲームで多少は見せられたと思う」と、１９歳らしい笑顔を見せた。

　練習前、千葉県内の宿舎に到着した岩渕の右手には「超音波骨折治療器」が抱えられていた。０２年Ｗ杯日韓大会前の４月１０日に左足第２中足骨を骨折して全治８週間の重傷を負ったベッカムが使用して、約６週間で戦列復帰を果たした秘密兵器。「手術した直後から使っています」と岩渕。レンタル元の帝人社担当は「１日１回２０分間の使用を継続することで効果は出ると思う」。平均で約４０％復帰時期が早まるという。

　五輪に出場するために１月に手術を決断した。４月１５日のなでしこリーグ開幕戦で復帰。９試合で５ゴールを決めて佐々木監督に「今年一番成長したのは岩渕。得点への意欲も出ている」と高評価された。ところが、６月１０日のＩＮＡＣ神戸戦で再び痛めた。同月のスウェーデン遠征メンバーに招集されたが、辞退せざるを得なかった。それでも五輪代表に選ばれただけに、本番に間に合わせるという意識が強い。

　佐々木監督も岩渕の復帰を待望している。Ｗ杯ドイツ大会では全６試合中５試合で途中起用。準々決勝ドイツ戦では丸山の決勝ゴールの起点となった。０８年Ｕ－１７Ｗ杯で準々決勝敗退ながら大会ＭＶＰに輝いた逸材。五輪本番でも勝負どころの切り札として期待は大きい。

　岩渕も明日１１日のオーストラリア戦出場を希望。「（右足は）強い衝撃があると不安で、まだ良い感じではない。でも出てアピールしたい。もしそれで何かあっても平気です」。再発も恐れない。１９歳のジョーカーが、復帰のＧＯサインを待つ。【鎌田直秀】

　◆岩渕真奈（いわぶち・まな）１９９３年（平５）３月１８日、東京都生まれ。兄の影響でサッカーを始め、関前ＦＣから０５年日テレ・メニーナ入団。０７年ベレーザ昇格。０８年なでしこリーグ新人賞。同年Ｕ－１７Ｗ杯ＭＶＰに続き、０９年Ｕ－１９アジア選手権では得点王およびＭＶＰ。１０、１１年は２年連続でアジア女子年間最優秀ユース選手賞受賞。国際Ａマッチ通算１１試合２得点。現在は駒沢女大２年生。１５５センチ、５２キロ。

　◆超音波骨折治療　骨折の治りを早めるために超音波を利用する治療。この治療法は、サッカーのデービッド・ベッカムやＭＬＢレイズ松井秀喜が骨折治療のために受けた。微弱な超音波を１日１回２０分間、骨折部に当てることで骨折治癒を促進する。米国が発祥で、９８年に日本に導入された。

　［2012年7月10日7時38分　紙面から］