なでしこ1000本ノック　鬼のノリさん

　佐々木則夫監督（５４）が「１０００本ノック」を予告した。前日１１日の壮行試合を３－０で快勝したなでしこジャパンは１２日、千葉県内で練習。ロンドン五輪決勝まで中２日で試合が続くため、強行日程に耐える体力づくりを目指す。今日１３日の非公開練習で、ノックで選手にボールを追わせる“過酷トレ”を計画している。この日も、男子大学生と混合で実戦練習。試合翌日とは思えない厳しい内容だった。鬼監督のノックが、なでしこの体力倍増の秘策になる。

　佐々木監督が、高校球児からヒントを得た。練習グラウンドの隣からは高校野球千葉県大会の球音と、大声援、熱気が伝わってくる。練習を終えたＦＷ大儀見、ＤＦ熊谷、そしてＭＦ沢が、その球児の情熱に触発されたかのように、ゴムボールでキャッチボールを始めた。「おい、お前ら。まだまだそんなに元気なら覚悟しておけよ。明日は俺がバットを持ってくるから」。野球帽をかぶった指揮官がニンマリ笑った。

　１６日に始まるフランス合宿。その直前の国内合宿では体力強化に重きを置く。ロンドン五輪本番は１次リーグ初戦から決勝まで、すべて中２日。しかもほとんどが試合翌日に移動もある。「１０００本ノックでくたばらせてやろうかな。五輪は疲れている中で決勝トーナメントも勝ち抜いていかなくてはいけない。国内キャンプの今しかない。緊張感の中での（決勝までの）６試合は甘くない」。昨年９月の五輪アジア予選では強行日程で苦戦した反省がある。

　この日は午後のみの練習だったが、男子大学生と約３０分の混合紅白戦を実施した。免除されたのはＭＦ沢、宮間ら前日に出場時間の長かった８人のみ。それでも、その前に約１時間半は全員参加でパスゲームや１対１の対応、シュート練習など男子相手の特訓は課されていた。沢は「もうちょっと軽くてもいいかなと…」と弱音を吐くほどのハード内容だった。

　強風の影響で回避したが、本来は紅白戦組には午前中にもグラウンドでフィジカルトレーニングを予定していたほど、チーム全体として体力強化への思いは強い。

　さらに、精神面での強さも求めた。紅白戦では簡単なパスミスなど緩慢なミスにスタンドからゲキを飛ばした。「大野、とられたら速く切り替えろ！」。ＤＦリーダーの岩清水に対し「俺が言うんじゃなくて、お前がしっかり直接指摘しろ！」。自覚を促した。

　今日１３日は非公開練習にして、さらに厳しさを増す予定。「疲れているんだよね～なんて言ってるようじゃメダルなんてとれない。勝ったからってフワフワしているようじゃ足をすくわれる」。国内組は、なでしこリーグなどで中１週間の試合に体が慣れきっている。１０００本ノックは中２日仕様に鍛え上げる秘策。佐々木監督は素振りをしながら宿舎に戻った。【鎌田直秀】

　［2012年7月13日7時7分　紙面から］