丸山出番は15分「ウルトラマンカリナ」

　【クレールフォンテーヌ（フランス）１８日＝鎌田直秀】ＦＷ丸山桂里奈（２９＝大阪高槻）がロンドン五輪でも、短い時間で相手を倒す「ウルトラマン」になることを宣言した。１７日の紅白戦（約２５分×３本）後に行われた、フルコートでの５対５の実戦練習。Ｗ杯ドイツ大会準々決勝ドイツ戦のように角度のないエリアから、代表復帰後“初ゴール”を決めた。「私の出番は１５分だから」と、後半終了間際から時間限定で決定力を見せつける。

　「カラータイマー」とともにスイッチが入った。５対５の主力組対控え組の実戦練習は２分１セットの真剣勝負。残り１分で、結果を出した。左サイドでボールを受けるとＤＦ１人を一瞬のスピードで抜き去り右足でシュート。ボールは逆側のサイドネットを揺らした。「あれはトーキック。ケガした後、今まで（試合形式の練習で）決めたことがなかったし、あの形は自分の持ち味。この１つのプレー、結果が自分の中の自信になった」。右膝前十字靱帯（じんたい）手術から復帰後“初ゴール”に満面の笑みを見せた。

　サイドは違うが、Ｗ杯ドイツ大会準々決勝ドイツ戦で決めたゴールを再現した。「まだ本調子ではない。今調子が良くなくていい。まだ早い。私は１５分だけの女。ウルトラマンみたい」。本家のウルトラマンは３分だが、相手が疲れた残り１５分での切り札は、指揮官も本人も共通認識だ。

　直前にもＦＷ大儀見からボールを奪い取ると、ＤＦ３人をドリブルで切り裂いた。シュートまでは至らなかったが、前を向いてドリブルで突破し、ゴールに迫る持ち味を披露した。

　その前には強い日差しの中で紅白戦も行った。疲れきった後に佐々木則夫監督（５４）が課した猛練習。丸山の足は疲労で動かなかったが、他選手もそれは同じ。相手の足が止まりかけた時こそ丸山の本領発揮の舞台があった。仲間もそれを分かっているかのように「カリナ～、走れ～！」と、ピッチサイドから何度も大声で声援を送られた。「アンチ（安藤）には『頑張れ』なのに…。やっていて笑っちゃいました」。丸山の懸命な姿とゴールは、チームの一体感も高めた。

　フランス出発前には両膝の前十字靱帯を痛めた経験のある東京ＭＦ石川から「前十字の代表として頑張ってね」とメールで激励された。「前十字連盟の隊長ですから。膝のこととかを聞いたり、相談していました」。男子五輪代表と同便の移動便では昨年９月の手術以降、都内の施設で一緒にリハビリをした東京ＭＦ米本や、鹿島ＤＦ山村とも、復活組代表として健闘を誓い合った。

　みんなに愛される“ヒーロー”は後半終了間際の投入こそ真骨頂。今日１９日もフランス戦で途中出場が濃厚。時間限定で強敵を倒して、本番へ加速する。

　◆丸山の途中出場　日本代表として７１試合に出場し、１４得点を挙げているが、先発出場はわずか４試合のみ。途中出場で通算１０得点は男女日本代表歴代最多得点。先発出場は上田栄治監督（現日本協会女子委員長）時代の、０４年４月２２日のアテネ五輪アジア最終予選タイ戦（国立）が最後。佐々木監督就任後は１度もない。昨年の女子Ｗ杯ドイツ大会準々決勝ドイツ戦では、後半開始から途中出場。延長後半３分に決勝ゴール。ロンドン五輪で得点すれば、３度目出場で初となる。

　◆ウルトラマン　特撮ものの巨大変身ヒーローで、６６年から「初代」ウルトラマンのテレビシリーズが始まった。「ウルトラマンの太陽エネルギーは地球上では急激に消耗する」という設定で、地球上では３分間しか活動することができない。エネルギーが少なくなると、胸についている「カラータイマー」が青から赤に変わり、点滅を始める。

　［2012年7月19日7時30分　紙面から］