なでしこ、仏を撃破！金王手！／サッカー

＜ロンドン五輪・サッカー：日本２－１フランス＞◇６日（日本時間７日）◇女子準決勝◇ロンドン

　なでしこジャパンが、女子サッカー界初となる五輪メダルを確定した。サッカー誕生の地、ウェンブリーでＦＩＦＡ（国際サッカー連盟）ランク３位のなでしこジャパンが、同６位のフランスと準決勝で対戦し、勝利した。前半３２分にＦＷ大儀見優季（２５＝ポツダム）が、２戦連発となる先制弾。さらに後半４分には、ＭＦ阪口夢穂（２４＝日テレ）が五輪初得点となる追加点を挙げた。フランス代表に１点を返されたものの、猛攻をしのぎきった。決勝戦は９日（日本時間１０日未明）に行われる。

　サッカーの聖地に、なでしこの大きな花が咲いた。ＦＷ大儀見が作ったチャンスを、自ら決めた。

　フランスに流れが傾いていた前半３２分、センターライン付近で大儀見が１８７センチのＤＦルナールからファウルを受け、ＦＫを獲得。約２５メートルの地点から、ＭＦ宮間がゴール前へ右足で正確なクロスを挙げた。相手ＧＫブアディの手からこぼれたボールに反応し、左足でシュート。ＭＦスーベイランがクリアしようと足を伸ばしたが、そのままゴールラインを越えて行った。

　“リベンジ”を果たすゴールだった。五輪直前の７月１９日。フランスでの親善試合。０－２で完敗した。大儀見は先発したが、無得点。さらに、フランス代表の選手は、ほとんどが同国リーグのリヨン所属の選手。「欧州ＣＬでも何度も対戦して悔しい思いをしてきた。私の成長、やっていく中での過程を考えさせてくれた。進化させてくれた相手なのは間違いない」。進化を見せつけるゴールで、前半を１－０のリードで折り返した。

　大儀見の活躍は徹底した「準備力」にある。練習場でも試合前のアップでも、会場のピッチ視察でも一番最初に顔を出すのは決まって大儀見。「練習前でも試合でも、私なりのリズムとか作り方がある。時間を計算したらやることが多すぎる。ただの準備ですよ」と当然の表情を貫く。

　決して人から押しつけられるのではなく、自分自身で考え、工夫する。その向上心は、見えないところでも努力を続ける。先月２８日の１次リーグスウェーデン戦当日。大儀見は起床時刻６時半の３０分前に起き、１人だけトレーニングウエアに着替えていた。朝食時間は７時から全員でとることが決まりになっているため、着替えの時間さえ惜しんだ。

　「１２時の試合時間から逆算すると本当は７時くらいから体を動かしたかったみたいです。早く起きて準備して、急いで食事し、１人だけ宿舎の庭に出ていきました」と同部屋の高瀬が明かす。その手には、妹永里亜紗乃（日テレ）から大会前に結婚祝いとしてプレゼントされたトレーニング機器。「みんなを代表しているからこそ責任があるし、私１人で戦っているわけではない」と大儀見。直前でメンバー落ちした妹や、一緒に戦ってきた仲間の分までという責任感が自然と体を動かしている。

　後半４分、先制点と同じく大儀見がファウルを受けてＦＫを獲得。宮間のクロスから、今度はＭＦ阪口がヘディングでカーブをかけたシュートが、ゴール右隅へ。阪口の五輪初得点が、貴重な追加点となった。

　同１５分、大儀見は自陣ゴール前での相手選手との接触。左足首を痛め、顔をしかめながらもピッチへ戻った。同２６分には、ＦＷネシブのシュートをＧＫ福元が左手１本で止めた。同３１分には左サイドを崩されて失点を許したが、同３３分のＰＫのピンチではＭＦブサグリアのシュートはゴール右へ外れた。後半は防戦一方になりながら１点を守り抜き、女子サッカー初となる五輪メダルの獲得を決めた。金メダルまであと１勝。前人未到のＷ杯、五輪の連覇へ、あと１勝。なでしこが、さらに大輪の花を咲かせようとしている。【鎌田直秀】

　［2012年8月7日7時10分　紙面から］