金宣言！沢「私が決める」／サッカー

＜ロンドン五輪・サッカー：日本２－１フランス＞◇６日（日本時間７日）◇女子準決勝◇ウェンブリー

　ＦＩＦＡ（国際サッカー連盟）ランク３位のなでしこジャパンが、ロンドン五輪準決勝でフランス代表（同６位）を破り、日本女子サッカー悲願のメダル獲得を決めた。代表入りして２０年目。なでしこを支えてきた大黒柱ＭＦ沢穂希（３３＝ＩＮＡＣ神戸）が「私も点を決めて、金メダル」と決意した。決勝は９日（日本時間１０日未明）、聖地ウェンブリー競技場で米国代表（同１位）と対戦する。勝てば女子サッカー界初のＷ杯と五輪の連覇となる。

　ついにメダルを勝ちとった。代表生活２０年目。沢は試合終了の笛と同時に、最高のうれし涙を流した。

　沢　みんなの笑顔を見たらこみ上げてきた。正直、最後はつらすぎて記憶がないくらい。苦しい時、悔しいこともたくさんあったけど、本当にサッカーをやり続けてきてよかった。集大成の大会で結果が出せた。でも人間欲がある。やっぱり金メダルがほしい。

　小２で本格的にサッカーを始めてから「女のくせに」と罵倒されることもあった。小６では女子ゆえに大会出場すら許されなかった。９３年に初代表。米国、ドイツなどの強豪国に全く歯がたたなかった時代から、なでしこの先輩たちをも引っ張り、パイオニアとして女子サッカーの顔となり、世界の頂点へ導いてきた。

　沢　五輪のメダルはＷ杯優勝とはまた違う価値がある。家族がいて、今までやってきた先輩がいて、一緒に戦う仲間もいる。日本で応援している方はもちろん、遅くまで起きて見てくれた子どもたちの声援も感じるからこそ頑張れた。私たちの姿を見て女の子もサッカーがやりたいとか、なんでもいいから夢を持ってくれるきっかけになってくれればうれしい。

　この日も、トレードマークのポニーテールはしっかりとはね回っていた。沢がしっかり動けているバロメーター。ボールを保持した前半はボールを動かし、フランスの速さを止めた。ピンチの場面では必ず察知し、体を張った。後半１５分、左サイドからの相手シュートは右太ももでブロック。高さのある相手セットプレーではニアサイドに立ちはだかり、クリアを続けた。

　沢　早く終わらないかと時計を見たけど、なかなか進まなかった。本当にしんどかった。決勝では１２０分は無理かもしれない。絶対９０分で決める。

　余韻に浸らず、決勝の舞台を見据えた。試合後のピッチ上では輪になって、選手同士で「公開ミーティング」も行った。

　沢　あと１試合。このすばらしい仲間で力を合わせようと話しました。１分、１秒でも多く、このドキドキ感が味わえることは幸せです。個人的なことを言ってはいけないのかもしれませんが、最後は私がゴールを決めて、絶対に勝ちたい。勝ちます！

　「サッカーで見返してあげなさい」と常に激励してきた母満壽子さんの姿を見つけると、駆け寄り抱擁。「ありがとう。金メダルかけてあげるね」と耳元でささやいた。昨年の女子Ｗ杯では得点王になったが、今回はまだネットを揺らしていない。ゴールを決めて、母との約束は必ず果たす。【鎌田直秀】

　［2012年8月8日7時23分　紙面から］