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コラム Nikkan Olympic Column
陸上評論・瀬古利彦 五輪コラム 陸上評論・瀬古利彦

 ◆瀬古利彦(せこ・としひこ)1956年(昭31)7月15日、三重・桑名市生まれ。四日市工高時代は総体800メートル優勝。76年早大入学後 マラソンに転向。福岡3連覇などマラソン15戦10勝。日本陸連理事。

藤原よ「漁夫の利」走法だ

 藤原は「漁夫の利走法」で上位を狙うべきだな。ケニア、エチオピア勢との地力の差は明らか。残念だけど、普通に競り合っては勝てないよ。25キロ過ぎにアフリカ勢が飛び出すはず。そこで付いていかず、自分のペースを守ることだ。藤原がすごいのは、1人でも走れること。周囲に影響されず、1キロ3分を切るペースで走れるのが強みだよ。

 飛び出すのは、アフリカの6人プラスアルファ。でも、全員がそのペースで走れるわけじゃない。けん制しながら走るうちに、必ず何人かは落ちる。アフリカ勢は分かりやすくて、メダルが見えなくなると急にペースが落ちる。五輪ではメダル以外は評価されないから「次の賞金レースに備えた方がいい」って、力をセーブしちゃうんだよ。藤原がちゃんと自分のペースを守れば「漁夫の利」で順位は上がっていくよ。

 4月に藤原から練習法の相談を受けたんだ。「30~40キロの間を、5キロ14分30秒で走るトレーニングをしなさい」とアドバイスした。ゆっくりしたペースの前半に消耗しなければ、このペースも可能。このタイムなら、上位から落ちてきた選手を拾うことができる。優勝予想タイムは2時間6分台後半から7分。藤原にとって、無理なペースじゃないよ。

 中本と山本は、まず藤原につくこと。力的には、藤原が上だからね。藤原はメダルでなければ「自分で自分を褒めたい」とならないんだろうけど、現実的には難しい。もし入賞できれば「褒めてあげたい」よね。

 [2012年8月12日10時3分 紙面から]



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陸上評論・瀬古利彦

陸上評論・瀬古利彦

往年名ランナーで日本陸連理事の瀬古利彦氏が陸上競技を評します。

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