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北島が「金有言実行」を封印

取材に訪れた萩原智子に髪の毛を触られる北島(撮影・宮川勝也)
取材に訪れた萩原智子に髪の毛を触られる北島(撮影・宮川勝也)

 ロンドンで五輪3大会連続2冠を狙う競泳平泳ぎの北島康介(29=日本コカ・コーラ)が「有言実行」を封印した。米国を拠点とする北島は19日、都内で練習を公開。4月の日本選手権以来、3カ月ぶりに国内で泳ぎを披露した。過去2大会は「金メダルをとる」という公言を実現したが、今回の公約は「楽しみたい」。100メートル、200メートルで今季世界ランク1位の優勝候補筆頭は、自然体で決戦の地に乗り込む。

 北島の顔に緊張感はなかった。4度目の五輪に臨む気持ちを聞かれると「少しでも期待に応えられるように頑張りたい」と言いながらも「一番は楽しみたい」と笑顔で言った。本番に向けて「やってみなけりゃ、分からない」。淡々と、気負いもなく、自然体だ。

 04年アテネ前は「金メダルをとる」と公約して「チョー気持ちいい」、08年北京は「世界新で2冠」を目指して「何も言えねえ」。目標を公言し、自らを追い込んで実現するのが「北島流」だった。しかし、今回は違う。「金メダル」という言葉は、最後まで出なかった。目標タイムも「もちろん速く泳ぎたいけれど、設定はない。タイムはオプション」と言い切った。

 北京大会までは平井コーチとともに戦った。しかし、北京後に単身渡米。米国で練習して「水泳に対する考え方が変わった」という。「水泳が楽しい。科学スタッフもコーチもいないけれど、スピードは体感で分かるからタイムも気にしない」とまで言った。ライバルも「気にしない」。あえて口にしないが、最大のライバルで親友だったダーレオーエンさん(ノルウェー)が4月に急死したことも、気持ちの変化に影響したのかもしれない。

 立石の「打倒北島」宣言にも「いいですねえ、若さは」と笑った。伸びたひげを触り「このままで」とジョークも飛び出した。緊張感はない。「何度も経験してますから」。今月12日に帰国して都内で調整。猛暑で「コンディション作りが難しい」と言いながら「調整は順調に来ている」と、本番への自信をみせた。

 「有言実行」は封印したが「不言実行」の悲壮感もない。「もう1回出るチャンスがあるんだから、楽しめる大会にしたい」。過去2回は「追う立場」で五輪を迎えたが、今回は初めて2種目で今季世界ランク1位。すべての言葉に、王者の風格が漂う。自然体で4度目の五輪を迎える「キング・コースケ」。口に出しても出さなくても、見えるのは金色に輝くメダルだ。【荻島弘一】

 [2012年7月20日9時6分 紙面から]



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