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北島 100惨敗…200もヤバい/競泳

ファンデルバーク(手前)が優勝の余韻に浸る中、ぼうぜんとする北島(後方)
ファンデルバーク(手前)が優勝の余韻に浸る中、ぼうぜんとする北島(後方)

<ロンドン五輪:競泳>◇29日(日本時間30日)◇男子100メートル平泳ぎ決勝

 競泳男子平泳ぎの北島康介(29=日本コカ・コーラ)が、無冠に終わる可能性が出てきた。100メートル平泳ぎ決勝は、泳ぎに本来の切れがなく、59秒79で5位と敗れ、五輪3大会連続2冠の夢がついえた。キャメロン・ファンデルバーグ(25=南アフリカ)が58秒46の世界新記録で優勝するなど、予想以上だったライバルたちが、厚い壁になった。今日31日から始まる200メートルも厳しい戦いが予想され、金メダルはおろか、メダルなしの危機にさらされた。

 厳しい現実を突きつけられた。100メートル決勝。4コースのファンデルバーグがスタートとともに勢いよく飛び出す。6コースのスプレンガーが続く。北島も必死に食らいついたが、50メートルの折り返しは27秒78の好タイムながら5番手。先行するライバルたちの背中を追えず、見せ場すらつくれず5着でゴールした。

 世界記録でコースロープに大の字になった新王者とは対照的に、北島はコースロープに左手をかけ、ぼうぜん。しばらく水から上がれなかった。目は充血し、心なし潤んでいた。

 北島 見ての通りです。せっかくのこの舞台で最高のパフォーマンスができなくて残念。それでも自分ができる精いっぱいのレースだったと思う。

 4月の日本選手権で58秒90の日本新記録をマークした時の切れのある泳ぎは戻らなかった。「足がよかったら、手がダメになり、今度は足がダメになって。行ったり来たりの繰り返し。頭の中で整理できなかった」。開幕前の会見で「自分で、自分に金メダルを期待しています」と自らにハッパをかけたが、体が呼応しなかった。北京五輪までコンビを組んでいた平井伯昌コーチに見てもらったが、あまりに時間がなかった。

 この1年で世界のレベルが跳ね上がった。昨年の世界選手権(上海)でダーレオーエンが前半50メートルを27秒20で突っ込み、そのまま58秒71の記録で押し切った。平井コーチはこのレースを「異次元」と表現したが、この日のファンデルバーグはそれを上回る27秒07。そのまま粘って58秒46の世界記録につなげた。北島は「無理。決めつけちゃいけないけど、自分が出す力はない」。太刀打ちできる域になかった。

 北島自身、勝負への心構えが薄れている。3大会連続2冠の夢がついえた直後、こう話した。

 北島 興味はあったけど、3連覇に関する執着心はなかった。僕は北京終わってから、また(競技を)開始したのも3連覇のためじゃない。ちょっといい記録が出たら、自分を何とか奮い立たせてきたけど。

 平井コーチは「あいつが負けるところなんて見たくなかった。『先生、すいません』と声をかけられたが、答えられなかった」。昨年の世界選手権では100メートルでダーレオーエンに完敗した後、2日間付きっきりで平井コーチが泳ぎを修正し、200メートルで銀に導いたが、今回はそう簡単にいかない。「あいつに気持ちがあるかどうか。上海では何が何でもというものがあった。だけど今回、闘志に火を付けられるかどうか」。

 今日31日から200メートルが始まる。北島は「最後まで粘るよ、自分がしなきゃいけないことだから」と言いながらも「ハイレベルな戦いになる。100以上に厳しく考えないといけない」と覚悟。金メダルはおろか、王者は無冠という危機に立たされた。【佐藤隆志】

 [2012年7月31日8時26分 紙面から]



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